第1章『発熱の夏、再び』

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その5 ケイコ 多美と祥子に会った3日後の夕方、さえが店にやってきた 同級の片山アカネと立花ルミ、それと後輩1人を連れて… 4人とは仕事が終わった後、K駅で待ち合わせということにしてね ... 「おけい、さっきは仕事中にゴメン。アンタが頑張ってるところをみんなで直視したかったんだ。その上で、話がしたいと思って…」 「うん、わかってる。こっちこそ、遅くなっちゃって…」 駅ビル内のコーヒーショップで、さえが”用件”を切り出した 「…まあ、こんな訳だよ。多美は最初から、祥子さんがトップになるのを了解しちゃってる。今の状況で二派がくっついたら、実際は向こうに吸収されるようなもんだ」 予想通り、さえは走りの部隊との合流には、反対という立場をとっているようだ ... 「本郷さんは、ひとつにまとまったところで、戻ってくると見てます。もしかすると、最初からそういう読みで一旦脱退したんじゃないかって、みんなも言ってますし。あの人の描きそうな絵図ですよ」 さえの子飼い、西脇理沙が1年のリーダー格に収まってるようだわ 「だいたいさ、多美は譲歩しすぎだよ。あっちの静美なんかはさ、1年前の火の玉川原で、おけいを見捨てて逃げた臆病者だって見下してるんだ、多美のこと。私らはそんな風に見てないけど、その辺、多美は負い目を感じてるから、付け込まれてるんだよ。奴らに…」 アカネは新入の時から荒子さんの親衛隊で、多美と共に先頭をきっていたイケイケだ 「それで、南玉を出た私にどうしろというの?」 「私らとしては、おけいには南玉に復帰してもらいたい気持ちだけど、それは無理だろうしね。アンタが大変なことは承知してるから。だけど、多美じゃ持たない。そこで、どうだろう?OG代表格って立場で、名前だけでも貸してくれないかな。その上で麻衣には、おけいを巻き添えにした謝罪を突き付けて、走りの連中をけん制したいんだ」 ルミがズバリときた… こうなっては、まず私の総括からだ ... 「私は各校部隊の頭でありながら、突然、南玉を放り投げた無責任極まりない人間だよ。あんたたちには、申し訳ないことをしたと思ってる。遅ればせながら謝るよ。本当にすまなかった」 「いいんだよ、それは。頭あげてくれよ、おけい…」 さえは中腰になって、恐縮してくれてる 私は頭をあげて、大きく一息ついた じゃあ、ここで行くか… 「みんな…、まずいくつか”事実”を言うよ。今回、クスリで警察沙汰になったのは、”誰か”の巻き添えってことじゃないんだ。自分の意思に従ったことなんだよ。相和会の会長さんとも、直接、条件合意を交わした。麻衣を通じて会ったとはいえ、無理やりとかじゃない。だから、退学だって自業自得だよ」 「おけい…」 案の定、みんな目を点にして固まってる…
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