第1章『発熱の夏、再び』

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その6 ケイコ 次は1年前の火の玉川原の件を話さなきゃ… 「…あの時、多美には及び腰の幹部連中に火の玉に向かうよう、ハッパかけて来てくれって頼んだんだ。荒子さんの号令待ちとかって言ってたけど、多美は、当の荒子さんが麻衣の一派に拉致されたのを目撃してたから。それを話せば決起するはずだと言ってね…」 でも、木戸先輩が全幹部を撤収させちゃってて、多美は一人とも接触できなかったんだ 木戸さんは、その多美のことを実は逃げんたと、”評判のよくない先輩”を介して噂を流したよ 麻衣のグループは今に至っても、そう思い込んでる 「多美は誰とも接触できず、私一人を戦わせたことで気に病んで、その噂には甘んじていたんだ…。だから、これまではっきりとは否定してなかった。それが本当のところだよ」 あの時のことは、みんな自分の都合に合わせて、好き勝手なことをいろいろ言ってたよ だが、多美と私は20人以上集まっていた麻衣の勢力を前に、たった二人、ギリギリの局面で”最善”を考えて行動したんだ ”現場”に背を向けていた人間に、その苦渋の決断をあれこれってのには異議ありだ! ... 「それと、これも事実なんだけどさ…。多美も祥子も南玉全体のことを最優先で考えてるよ。なぜなら、今、南玉が団結できなけりゃ、排赤勢力が攻めてくるのを防げないからだよ。反排赤の核になれるのは南玉連合しかないと確信してるからね、あの二人は」 私の目をじっと見つめている4人の表情は真剣だ 「…今、砂垣さんはこれまで以上の規模で陣営を結集させて、臨戦態勢に入ってる。そんな時に、お互い感情的にいがみ合ってる場合じゃないんだ」 ここでは、私も少し感情的な物言いだった 「確かにそれは耳にしてる。でも、麻衣の仕掛けだって見方が大勢だよ。砂垣さんは麻衣のバックの指示通りで動く、操り人形だったんでしょ、去年の再編成では。なら今回も…」 ルミがそう言うからには… みんな、去年と一緒のシチュレーションで捉えているのか… 「みんな、まず間違いないであろうこととして、はっきり言うよ。麻衣は相和会のバックから外れてる。そして、それを砂垣さんも知ってる。当然、砂垣さんのバックである星流会もね…」 「じゃあ…、ヤバいじゃん、それが本当なら…」 アカネは正面のさえに向かって、訴えるような口調だった
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