1人が本棚に入れています
本棚に追加
第1章『発熱の夏、再び』
その1
麻衣
夕方5時半前、倉橋さんと別れて家についたんだが…
「麻衣さん!」
バイクから降りると、声をかけらてた
振り返ると、懐かしい顔がズラリだわ…
「麻衣さん、ちょっとお話があるんですが…。いいですか?」
新村静美はテンションの高い口調だった
こいつは今やレッドドッグスのアタマだ
他にドッグスの主要メンバー3人か…
...
「がん首揃えてなによ?」
「排赤の風が吹いてきました。突風です!また砂垣が動きだしたんです。すでに南玉の新入が一人、ちょっかい出されてトラブルになってます!」
もう来たか…
「祥子は知ってるのか?」
「はい。走りの方はもう気合い満タンですよ。でも、各校の側がシャキッとしないんです。祥子さんと本田さんの間では、一本にまとまることで話しがついてるのに…。奴ら、こっちには一物あるみたいで。特にドッグスとは一緒になれないと、駄々こねてるんですよ!」
「克子の言うとおりですよ、麻衣さん。結局、多美じゃ各校サイドの連中をまとめきれない。フン…、みんなは忘れてないんですよ。去年の火の玉でおけいを残して、自分だけ逃げたのを…」
静美は吐き捨てるように言ったわ
まあ、同じ南玉とはいっても、おけいと私の両部隊はずっと犬猿の仲だったもんな…(苦笑)
...
「…それでも祥子さんはこの際まとまらないと、排赤に潰されるからって、各校側に根気よく説得してるんです。ところが、向こうは麻衣さんのことをまだ根に持っているようで、こっちとくっつくの、抵抗があるんです。ふざけてますよ。祥子さんが気の毒です!」
「麻衣さんが戻ってきてくれれば、奴らとはいっそ別れて、ウチらの協力勢力を結集できます。祥子さんも口には出さないけど、そう望んでますよ、きっと。これは、ここにいないメンバー全員の思いです。お願いです、もう一度、カムバック考えてください!」
克子がそう切り出すと、他の3人も、身を乗り出して私に熱視線を送ってきた
すごい迫力だわ、こいつら(苦笑)
...
「克子、悪いけど、私が南玉に復帰することは100%ないよ。それに、おけいがいない状態で私が戻っても、同じだよ。まとまらない。かといって、分裂は絶対ダメだ。それこそ、排赤勢力の思うつぼだぞ」
「麻衣さん!じゃあ、どうしたらいいんですか?砂垣一派は一気に来ています。このままじゃ…」
確かに克子の言うとおりだ
私が星流会を蹴ったことで、砂垣にはこれまで以上のバックがついたに等しい
この時とばかり、怒涛のように攻めてくる
当然、南玉を離れたとはいえ、黙って見過ごす私じゃない
だが、ここで私の真意は言えないわな…
...
「実は、遠回しに各校部隊の連中からは、私におけいへの謝罪を求めるシグナルが届いてる。これは多美の頭越しだ。おそらく多美はそれを押しのけたと思う。今のおけいに私を接触させることは、危険だと判断したんだろう。祥子もそれは了解してるらしいしな」
「冗談じゃありませんよ!そこまで向こうに譲歩するなんて我慢なりません。麻衣さん、横田さんにアタマは下げないで下さい!」
もう、4人とも顔を真っ赤にして、興奮状態だよ
まあ、活きがよくて頼もしいが(笑)
「あのな、おけいと私の今の状況は南玉とはかけ離れた、まあ個人間での確執なんだ。そもそも、筋が違うさ。だから、違った形で各校側の要求には対処するつもりさ、私自身がね」
ここでみんなは、お互いに顔を見あわせてる
ふふ、ちょっと驚いたようだ
...
「…、だから、お前らには、あくまで祥子を支えてやって欲しいんだ。ヤツは南玉を絶対割らないことを、最優先にして動いてくれてる。”全体”を考えてるんだ。出て行った私が勝手な話だが、頼むよ。みんなも安易に行動をはやらないでくれ、なあ…」
4人は黙って、頷いてくれた
何人かは目に涙を浮かべてる
ここで家の前での立ち話は終わり、4人は引き揚げて行った
...
さあ、今日の倉橋さんとの申し合せ、それに先程のドッグス有志の心情を踏まえて、わがコンシエーレのお姉さん方に電話だ
ヘへ…、かなりの根つめた話になるぞ、今夜は
まずは真樹子姉さんからだ…
最初のコメントを投稿しよう!