no.4

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no.4

佐久先輩が好きですって言ったら、一体、先輩はどんな顔をするだろう。 仕事合間の喫煙ルーム。煙の向こう側、正面に立つ佐久先輩の顔を眺める。 先輩の口に咥えられているタバコになりたいなんて、馬鹿なことを考えたり、あの長い指を一本、一本、自分の口に含んで、舌を絡ませたいとか、そんな、狂おしい妄想にとり憑かれ、一瞬、意識が飛ぶ。 「何?」 ヤバい、見すぎた。気をつけないと。同性愛者は、目つきに現れるとよく、言われる。 ここで怪しまれたら、かなり、まずい。今まで築いてきた先輩との信頼関係や、最悪、仕事まで失ってしまうかもしれない。 人を好きになるだけで、こんなリスクを伴うなんて、、、仕方ない、これが俺が俺である宿命だ。 過去を振り返ってみたって、いつだってそうだった。仲良くなるために近づいたのは、下心のせいだよと、何度、親友の知らぬところで、自分のやるせない気持ちを吐露したか。 何度、好きな子が出来たって、相談されて、幾度となく、身を裂かれる思いで、青春をやり過ごしてきたことか。 俺の人生って、何? 人生、あきらめなきゃいけないことばかりで、俺だって、本当なら、普通に告白して、普通にデートして、普通に結婚したいんだ。 絶望しかない。 揺らぐ煙りで、視界がぼやける。タバコの煙りが目に滲みる。 「相田、お前、俺のこと、見すぎ。なんて顔してんだよ。。。」 「えっ。。あっ、すみません。」 いきなり放たれる先輩からの言葉に動揺し、まだ、随分と残っていたタバコを慌てて揉み消す。 「頼むから、いつも、いつも、俺のことそんな目で見ないでくれよ。。。」 二人しか居ない喫煙ルーム。先輩の憂いを帯びた目が霞むと、世界がぐらりと揺らいだんだ。
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