no.7

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no.7

佐久先輩の生家は、病院を経営していると言っていた。家系を継がない条件として、先輩は医者である奥さんと見合いをし、そして、結婚をした。 今は、奥さんが事実上、病院の後を継いでいるのだが、周囲からの世継ぎ誕生の期待も高まり、いずれは、子供を持つことになりそうだと、まるで、他人事のように淡々と先輩は話してくれた。 「名前は、お前と一緒にするかな。男でも、女でも、ヒロって、いい名前だよ。」 「先輩は、きっと、良いお父さんになるね。面倒みよくて、しかも、カッコいいパパ。」 「子どもが、話すようになったら、お前に会わせるよ。」 「なんて言って、紹介すんだよ。」 先輩が、俺の言葉に目を閉じ、一瞬、黙りこむ。俺は、何て返ってきてもいいように、心つもりをし、構えて待つ。 「本当は、ずっと、一緒に居たい人。家に帰ったら、待つててくれて、おかえりなさいって言ってほしい人。ケンカ沢山して、嫌なとこいっぱい見せて、それでも、好きでいれる自信をくれる人。後は、そうだな~、たまに、とぼけたとこがある、世界で一番可愛い奴とか、、、かな?」 ペラペラとよく、出てくるね。。。泣きたくなって、胸がつっかえて、苦しくて、もう、二人の関係を終わりにしようと、思った。 そんぐらいしか、俺には愛を表す術がない。 未来の素晴らしき命のために。。。 一瞬の気の迷いが真実の愛に変わるとき、それは、絶望しかないのだから。
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