1%の恋/イナギの独白

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1%の恋/イナギの独白

 アヤは嫌われ者だった。────否、当然俺だって嫌いだったさ。  "だった"。つまりはそういうことだ。今はまぁ、嫌いじゃない。  ただ、まぁ、何というか……カワイソウな男だったよ。アイツは。  顔は外国の血でも混じっていそうな美形だった。目鼻立ちはくっきりしているくせに儚げでアンニュイ。髪も色素が少し薄くて、猫毛で、体型も細身で、身長は178くらいはあったんじゃないのか。いかにも女にモテそうな優男。  ただ、その、何と言ってやればいいのか。内面が困った奴だったんだ。性格うんぬんじゃなくて、そう、何かが欠落していた。  心────感情────あるいは感性? 何かそんな奴がさ。妙な所がすっぽりなかった。だから、人ともよく揉めたし、話も食い違う。やっと話になってきても、「なんで」「どうして」「そういうもの?」ってさ。真面目な顔で言われる。  びっくりしたというか、正直ちょっと引いたよね。何だコイツは、ってさ。  顔はいいから女の子に告白はされる。それでもアイツは困ってた。恋や愛を知らないから。分からないから。  どうして?  僕が好き?  何がしたいの?  何が欲しいの?  セックス?  それともキス?  いや、本当に、まじでコイツはやばい奴だと思ったよ。おかしいと思った。  なのにどうして俺は。あんなサイコパス野郎について話をしてやれる程の仲になってしまったんだか。マゾか、そういう厄介に好まれるタチなのか。あるいは俺も少しおかしいのかも。  ────俺は、きっと、どこかの一歩、あるいは一言、あるいはひとつの仕草が違ったどこかの世界で、それこそ1%の確率で。アイツに恋をしていた。
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