chapter6

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「あんたはせっかち過ぎなのよ!最後まで朝美の話をちゃんと聞きなさい!」 優希に言われ、陽ちゃんは渋々といった感じで、朝美の話を聞こうとする。 「まったく。話は最後まで聞くものだよ。今年は私とじゃないよ。君と一緒に出るのは杏奈だよ。そうだろ杏奈?」 朝美に話を振られ私は焦った。注目が集まり、私が何か言うのを皆待っている。本当に急すぎだよ。 「え、えっと…よろしくお願いします!」 私は深々と頭を下げた。一瞬の静寂の後で、クラス中から拍手が巻き起こる。 「良かったじゃないか陽介。皆も君たちが出ることに賛成のようだよ」 一瞬悲しそうな顔をした朝美は、すぐに笑った。そんな朝美の変化に私以外はきっと気がついていない。 ごめんね朝美。友達として私を応援してくれている気持ちと、朝美自身の陽ちゃんに対する気持ちが複雑に混ざりあったそんな感情を私は見逃さなかった。 「杏は本当に俺と出たいのか?」 「うん。私は陽ちゃんとじゃないと出る気ないよ」 またクラス中から拍手や、おぉーと言う声が聞こえてくる。朝美と目が合い、彼女は満足そうに頷いていた。
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