転がる石のように

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「こんばんは、パスピエ君。私は明後日には、三十才という節目の年を迎える事になってしまいました。きっと、あなたの倍くらい生きている事になるね。もう天井がどこにあるのかわかってしまう年頃になってしまって……なんて、自分で言っていて嫌になっちゃう。パスピエ君はまだまだ高校生だから、なんだって挑戦できるし未来は際限なく自由で、でも、そんな自由を守ってくれている、お母さんやお父さんに感謝しなくちゃダメだぞ。などと、年よりじみた台詞も板についてきたような気がします。ヤダヤダ。  明日は最近、贔屓(ひいき)にしているバードマンというバンドのライブに参戦してきます。きっと帰りには汗だくになって、途中でビールなんか引っ掛けたりなんかして。うーん、こういう何かから逃げるようなはしたなさやしどけなさは、パスピエ君にはきっとわかりづらい話だね。ごめんごめん。私はこういうどこにでもいるありきたりな大人になってしまったみたい。  ところで、文化祭の準備は順調に進んでいる?  パスピエ君がどんな仕事を任されているのかわからないけれど、君はとってもしっかりさんだからきっと周りのみんなに頼りにされているんだろうな。万事が首尾よく行くことを願っています。色んな事があるだろうけれど、全部を純粋に楽しめるといいね。  では、私はこれからもうひと仕事、明日を楽しみにがんばってきます。  おやすみなさい」
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