対ロクマタオロチ

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「――えっ」  砂村は右頬に風を感じた。まるで何かが高速で通過したような感覚がするも、定かではなく後衛を見る。 「…………あの、今何か通りました?」  後衛に立っていた佐々木も素っ頓狂な表情をしていた。  ホイッスルの音。モニターの表示が変わる。 【0―1】。  それはロクマタノオロチのサービスエースが決まった証拠だ。 「こんな夢、やってらんねえわ」  後衛にいた渋沢がとうとう我慢できなくなったようで、コートを出ようとする。 「渋沢くん! へたに動かない方が――」  辻が呼び止めるも、構わず歩を速める渋沢。  再び、地響きがした。  試合中のコートからかなり離れた位置で、無数の影が大地に穿っているのが見える。 「きゃあっ!」  女子陣の悲鳴が響く。  それは十字架に張り付けられた男女の死体だ。どれも各メンバー同様、トレーニングウェア姿だ。まるで彼らを囲むように点在している。 「いやだ……いやだああ!」  取り乱した桂は一目散にコートを後にする。逆に無数の十字架に向かう形になるが、気にする素振りもなく全力疾走する。  大地に亀裂が走ったのは、その直後のことだ。  桂が全力疾走する眼前の大地が抉れ、彼らのコートを残して徐々に崩壊していく。穿たれた十字架もろとも、奈落の底へ消えていった。 「そ……そんな」  桂はその場にへたり込む。  取り残されたコートで、各メンバーは声も出せずにいる。 【異空間バレーボール ルール】  ・基本的ルールは現代のバレーボールに準ずる。  ・一セットのみで、十点先取したチームが勝利。  ・各チーム、タイムは二回まで。一回につき二分。  ・  モニターに表示されるルール説明。その最後の項目が無機質に並ぶ。 【・負けたチームは死亡】。  対戦相手のロクマタノオロチはボールを額でリフティングしている。まるで待ちくたびれるような表情だ。
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