対ロクマタオロチ

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 タイムアウトの間、ロクマタノオロチは六本の首を互いに絡ませていた。戯れ、リラックスしているのか、気の抜けた鳴き声も上げていた。  タイムアウトが終わり、メンバーはそれぞれのポジションに戻りレシーブ態勢をとる。それを確認した六又は、サーブの構えを見せる。  ギラリと光る目が目標を定め、鋭いサーブを放つ。  狙いは――前衛の佐々木だ。  彼女は何とかレシーブするも、落下点が大きくずれる。草地は懸命に走りトスをレフトに上げるが、大きく乱れたトスとなる。  渋沢は走り込む。  その動きは先程に比べて、幾分かリラックスしていた。  放たれたスパイクの軌道に、メンバーは度肝を抜かれる。  コートを目掛けて打つのが常識だが、彼は鈍角に放ったのだ。まるでサーブを打つような軌道だ。二階の観客席に向かって打つようなものだ。  間違いなくブロックに掠りもしない――本来のバレーボールだったら。  しかし、聳え立つ壁と化した右側の首の端に、見事に命中した。  それは辻の助言通り、ブロックアウトとなる。ブロックアウトの軌道を読むのはほぼ不可能、それは六又も同じ。落下点に滑り込もうとした後衛の一本だが叶わなかった。  それにより、コート中央で鎮座していた身体が思わぬ力を受けて少し傾いた。 【4―6】。  すぐさまコート内のメンバーとハイタッチする渋沢。 「いいぞお! 渋沢くん!」  大はしゃぎする辻に渋沢は軽く手を振る。  陣形は変わり、後衛に下がった佐々木の代わりに草地が前衛へ。  草地のサーブを受け、六又が攻撃を仕掛ける。  例の超高速クイックだ。  しかし、常に張り付いていた薬丸のブロックに阻まれる。 【5―6】。 「っしゃあああっ!」  歓喜の雄叫びを上げる薬丸。桂はコート脇で先輩の勇姿を称える。  佐々木のサーブは続く。  安定した軌道でややブレるサーブは六又の陣形を乱す。  同じ手は使わないとばかりに、今度はライトから攻撃を仕掛ける。ブロッカーは渋沢。  一騎打ち――放たれたスパイクは渋沢のブロックに当たる。 「カバーッ!」  声援が飛ぶ。いち早く反応したのは、守護神・リベロの宇佐美だ。  見事なダイビングレシーブで草地へバトンを繋ぐ。  草地の腕の見せ所だ。攻撃手段はレフト、センター、バックでは砂村も控える。  ――お願いっ!  草地が託した相手は――センター薬丸だ。 「B――クイックッ!」  お返しとばかり、クイックを仕掛けた。四種類あるクイックの内、セッター前方、やや遠い位置から繰り出されるBクイックだ。  六又は完全にブロックを外され、なすがままにボールが地面を切り裂くのを見つめることしかできない。 【6―6】。  ついに同点だ。 「――ダァァイム」  すかさず六又の一本がタイムをコールした。
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