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タイムの間、メンバーは先程の作戦を今一度確認し、リラックスした。瞬く間に時間は過ぎ、タイム終了となる。
佐々木はミートを確かめ、サーブを放つ。
明らかに先程と違う陣形に、辻の声が響く。
「気をつけて！ バック――」
言い終える前に、自陣を切り裂いたボールの軌道を追うメンバー。
【６―７】。
辻は『バックアタック』と叫ぼうとした。
しかし次の瞬間にはスパイクは放たれていた。まるでクイックのような素早い攻撃。
「バッククイック？」
「うそだろ？」
バッククイック――彼らにとって未だ経験のない、未知なる攻撃である。
再び絶望感がチームに漂い始める。
「次いこう！ 次！」
手を叩いて鼓舞するのは砂村だ。乱れかけたチームを何とか立て直す。
六又のサーブをリベロ宇佐美が処理し、草地は一瞬後衛を確認する。
コールはなかった。しかし砂村はスパイクの構えを見せている。
――一か八か！
流れを変えるべく、草地は迷わずトスを上げる。
「バックッッ！」
希望のバトンを受けとる砂村。
放たれたバックアタックは六又のレシーブを弾く。彼方に吹っ飛んだボールは奈落へと落ちていった。
【７―７】。
陣形チェンジ。後衛に薬丸。
「桂君、ファイ！」
「うん！ おつかれ！」
役目を終えた宇佐美と桂が交代する。表情を引き締めた桂が前衛へつく。
薬丸のサーブを処理し、六又はレフトにオープントスを上げる。ブロックが甘い所からスパイクを仕掛けるつもりだ。ライトには草地、とてもブロックできない。
そこへ迫る、一際大きな影。
「桂くんっ！？」
辻は息を呑む。
作戦ではセンターはクイック対策で動けない筈だ。
しかし桂は先程と同じ手――クイックは使わないと踏んでいたのだ。作戦とは反するがサイドのどちらにも動けるように準備していたのだ。
すかさずライトに移動した桂と草地の二枚ブロック。
ボールは桂の左前腕にはじき返された。
【８―７】。
自身に満ち溢れ、歓喜の声をあげる桂を囲むメンバー。辻と宇佐美もコートに入りそうな勢いだ。
薬丸のサーブが続く。しかし六又はバックから横に曲がるカーブスパイクを繰り出し、後衛の佐々木のレシーブを簡単に弾いてみせた。
【８―８】。
「あんな曲がるスパイク……とても」
弱音を吐きながらも汗を拭き、構える佐々木。
「みんな！ 最終手段、使いましょう！」
辻の一言が、メンバーの表情を変えた。
「これはスポーツじゃないのだから！ 勝ちましょう！ ぜったい！」
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