クリスマスの後継者

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「そうだよ。金だよ。いいか、信二。金は大事だぞ。金があれば毎晩銀座で寿司が食えるし、スポーツカーにも乗れる。移動はプライベートジェットだし、住むところはタワーマンションの最上階だ。」 「結構夢あるな。」 自分の父親の金持ちに対するベタすぎるイメージに信二は呆れてしまった。 「それにな、うまくいけば石原さとみと結婚できるぞ。」 「あの人、もう結婚したよ。」 「え?あ、そうなの?でも、石原さとみみたいな美人とって意味だよ。剛力彩芽とかどうだ?」 「剛力彩芽か~?確かに、そういうイメージはあるけどな……パスで。」 「馬鹿野郎。金のない今のお前に断る権利なんて無いんだよ。そういう事は金持ちになってから考えな。」 「親父が言い出したんじゃないか。」 いつの間にか、克己の息子に対する小言も馬鹿話になってしまった。 「さて今日もそろそろ閉めようか。」 薄明るくなってきた街の風景を見ながら、信二は言った。毎日の事だった。  だが、この日は違った。 「いや、まだだ。」 克己は真剣な表情になり、のれんを下げようとしていた信二を制した。 「なんでよ。客は全員帰ったし、もう夜が明けるぜ。」 信二はキョトンとしながら、のれんを持った手を止めた。 「今日は12/25のクリスマス、が明けて26日の朝。まだ予約のお客が来てねえんだよ。」 克己は腕組みをしたままじっと外を見つめていた。 「予約?そんな話聞いてないぜ。大体、屋台って予約とかできんのかよ。」 「あの人は特別だ。」 「特別?そんな客がいるのか。俺半年以上ここで働いてるけど初めて聞いたぜそんな話?常連さんなのか?」 「まあ、常連ではあるが頻繁には来ないな。」 何だか、おかしな事を父親が言っていると信二は思った。 「頻繁に来なかったら常連じゃないじゃないか。」 「頻繁には来ないが、一年に一回必ず来てくれるのさ。先代の頃からな。そして来るのは決まって12/26の朝、つまり今日だ。」
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