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ちなみに、桜小路さんのお父様は、まだ幼い桜小路さんに母親が必要だという周りからの強い勧めにより、その一年後には再婚されて、腹違いで今年二十歳を迎える弟も居るそうだが、折り合いが悪く、桜小路さんは高校を卒業して以来ずっと菱沼さんと一緒にこのマンションで暮らしてきたらしい。
話を聞き終えて……
――いくら裕福な家庭に生まれたからって、幸せとは限らないんだなぁ。もしかして、無愛想なのも、口が悪いのも、そういうことが影響してるのかなぁ。
なんてことをしんみりと思っていると。
「まぁ、どんな家庭も色々あるだろうが、裕福な家庭ほど複雑なのかもしれないなぁ」
昔のことを懐かしむように遠くを見つめるようにして語ってくれていた菱沼さんがボソッと呟く声がして。
「え!?」
視線を向けると、どうやら無意識に呟いてしまっていたらしく。
「……あぁ、いや。とにかく、そういうことだ。くれぐれもカメ吉に粗相がないように頼む。それと、創様がシフォンケーキを食べたいとおっしゃったら、何を差し置いても応じて差し上げろ。分かったな?」
「はいッ!」
すぐに仕切り直して、仕事モードに切り替えた菱沼さんの言葉に、私は気合いも新たに元気よく答えて見せたのだった。
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