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「……あぁ、はい」
そういえば、今日何を作るかの指示がまだだったんだっけ、と思いつつ答えたところ。
「今日はそれを作ってくれ。それが美味かったら、この前、期待してないと言ったのを撤回してやる」
これぞ傲慢な御曹司、を絵に描いたような桜小路さんから、安定の無愛想で不遜な口調だし、条件付きではあったが、そんなものもどうでもよくなってしまうくらいの、信じがたい言葉が返された。
……てことは、『……まぁ、別に、スイーツなんて誰が作っても同じだろうし。俺は、端から期待なんてしていなかったがな』
――あの言葉を撤回してくれるってこと!?
吃驚した私が大きく見開いた眼で遙か高いところにある長身の桜小路さんの顔を見つめ返せば、
「分かったらさっさと仕事しろ」
ぴしゃりと言い放ち、まるで私の視線から逃げるようにして、クルリとこちらに背中を向けて、菱沼さんに続いてスタスタと歩き始めてしまった桜小路さん。
面と向かって『美味しかった』と言われた訳じゃないが、少しはパティシエールとしての腕を認めてもらえた気がして、その嬉しさに舞い上がってしまった私は、大はしゃぎで部屋の掃除に取りかかったのだった。
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