#13 突然の訪問者

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【まぁ、それは良かったわねぇ】 「はいッ!」 【それにブランマンジェ、美味しそう。私も食べてみたいわぁ】 「あっ、良かったら食べてみてくださいよ……って。ええッ!?」  桜小路さんの言葉があんまり嬉しかったものだから、はしゃぎまくりだった私は夢中で喋っていたんだけれど、途中で、今更だけど、ハタと気づいたのだった。 ――私って、一体誰と話していたんだっけ? と。  ブンブンと(かぶり)を振って辺りを見渡してみても、当然誰も居なくて。唯一今ここに居るとしたら、水槽の中のカメ吉だけ。  水槽を煌々と照らしている紫外線ライトのその下で、ゆったりとした動作で首を傾げて、こちらをじっと窺っているような素振りを見せるカメ吉。  意外と円らな潤んだ瞳をパチクリ瞬かせているカメ吉と、対峙し見つめ合うこと数秒。 ――いやいやいや、ないないない。だって、亀だもん。  そういえば、事故に遭ってから三日間も意識なかったらしいし。退院したばかりだったし。環境もめまぐるしく変わったし。ちょっと疲れてるのかも……。  でも、そろそろブランマンジェの準備をしないとなぁ。冷やし固める時間を考えたら、遅くとも午後一時までには冷蔵庫に入れとかないと。  今が、一〇時五〇分を回ったところだから、もうちょっとだけ休憩しようかな。
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