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ふと、壁に掛けられているクラシカルな時計から、再びカメ吉へと視線を向けた刹那。
【ふふっ……やっぱり思った通りだわぁ。可愛いパティシエールさんには私の言葉が分かるのね】
微かに首を傾げさせたなんとも愛らしいポーズで私のことを円らな瞳で見つめつつ、あたかもテレパシーでも送るようにして言葉が私の頭に割り込んできて。
「かっ……か、か、か、か、カメ吉ッ!?」
確かに言葉は頭にすーと入ってくるんだけど、正確には喋ってはいないのだが、そんなもん冷静でなんていられる訳もなく、腰を抜かすほど驚いてしまった私は盛大に派手な声をぶちまけていた。
そこに、やけに冷静なカメ吉から再びテレパシーのように頭にすーっと言葉が入ってきて。
【驚くのも無理ないわ。私だって死んだとき、『我が子を残してなんて成仏できないからこの世に残して』ってお願いしたけど。まさかお祭りでもらってきたカメ吉に転生するなんて思わなかったもの。でもお陰で、カメ吉として天寿をまっとうするまでは創の傍にいられるんですもの。こんなに嬉しいことはないわぁ】
どうやらこれが夢ではないらしいこと。
そして驚くことに、その内容と口ぶりからして、昨夜聞いたばかりの桜小路さんのお母様らしいということが分かったのだった。
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