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どうやら私はカメ吉に転生しているらしい桜小路さんのお母様と、今、話をしているらしい。
けれどもにわかに信じ難くて、いまだうまく把握しきれてなどいないのだけれど。
カメ吉を瞠目したまま見つめることしかできないでいる私の耳に、突如パタンと、私とカメ吉しか居ないはずなのに、どこかのドアが閉まるような物音が聞こえてきた。
……ところで、今の私にはそんなことに気を配っているような気持ちの余裕もなく、ただただ突っ立っていることしかできないでいる。
すると今度は、パタパタと誰かが廊下を歩くような音が徐々に近づいてきて、カメ吉ルームのドアがガチャリと音を立てた次の瞬間。
開け放たれた扉の向こうから、年の頃でいうと、五十代いくかいかないかくらいの、上品な装いをした綺麗な女性が現れた。
【その方、創の継母よ。香水の匂いが凄いから後でしっかり換気した方がいいわ】
「入ってそうそう大きな声がしたと思ったら、こんなところにいらしたのねぇ。あなた、新しいハウスキーパーの方?」
どうやらカメ吉に転生したお母様の説明によると、桜小路さんの継母のようだ。
――って、ちょっ、ちょっと待って! 頭が追いつかないんですけど。
私の頭の中は、なにがなにやら、もう大パニックだ。
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