#14 事実は小説より奇であるらしい

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……でも、それならそうと一言そう言っといてくれたら、こんなにビックリすることもなかったのに。  私がそう思うのも当然だと思うが、そんなことより今は、カメ吉に転生しているらしい桜小路さんのお母様のことだ。  継母が居なくなったカメ吉ルームで、そう思っていたところに、すーっとお母様の声が割り込んできて。 【やっぱり香水の匂いが凄いわねぇ。早く換気しておいた方がいいわぁ。匂いが付いちゃったら大変。菜々子ちゃん、悪いけどお願いできるかしら】  いつのまにか、『菜々子ちゃん』呼びになっていることに、半端ない違和感を覚えながらも、私はだだっ広い部屋中の換気に奔走したのだった。 ✧✦✧  ようやく換気も終えてカメ吉ルームに戻ってきた私はソファに倒れ込んで、「はぁ~、ビックリした」と放心しているところに、 【菜々子ちゃん、お疲れ様】  お母様の優しい声音がすーと沁みてくる。 「……はは」  この現実離れした現実をどう受け止めればいいのかよく分からず、無意識に笑いがこみ上げる。 ――やっぱり聞こえてくるし。  でも、どうしてお母様の声が聞こえるんだろう?  勘案して辿り着いた私の疑問に、お母様の思いがけない言葉が、再びすーと割り込んでくるのだった。 【あぁ、それはきっと、菜々子ちゃんが事故で死にかけていたのを私が助けたからじゃないかしら】
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