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愛梨さんから聞かされた話は、やっぱりにわかに信じがたい話ではあったけれど……。
おぼろげではあるものの、確かに事故の時に儚げな女性の姿を見た記憶もある。
とはいえ、あまりに現実離れしていて、正直なところよく理解はできないけど、そういうことなんだろう。
死後の世界というものが実際に存在してるんだなぁ、と感心しつつ、命の恩人だったらしい愛梨さんに感謝しきりの私だった。
「そうだったんですか。それはありがとうございました」
【いいのよ。カメ吉の姿になっちゃったけど、創の傍に居られるんだし。こんな可愛らしいパティシエールさんのお役に立てて光栄だわ】
「愛梨さん」
優しい愛梨さんの言葉に感動して思わず涙ぐむ。するとそこへ。
【それに、これからは私と話ができる菜々子ちゃんがついててくれるんですもの。こんなに心強いことはないわぁ。これからは持ちつ持たれつ、色々と助け合っていきましょうね? 菜々子ちゃん】
相変わらず優しいものではあるけれど、悪戯っ子のような口調で、恩にでも着せるようような、そんなニュアンスのある愛梨さんのやけに弾んだ嬉しそうな声がすーっと割り込んできた。
「……そ、そうですね。あはは」
そこで、愛梨さんがあの桜小路さんのお母様だということを思い出した私は、なにやら嫌な予感がして、それが当たらないことを心底願っていたのだった。
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