第三章 デビュー戦

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――センター藤原、ライト高部……  試合開始の前に選手が守備位置に就いていく。 「スコアラー田中ってアナウンスして欲しいですね」 「まきちゃんのデビュー戦ね、頑張って」 「はい!私も選手と同じくらい温まってます!」 ――1番ショート武岡  試合開始と共に、雑談していた観客のファンがグッと視線を打者に向ける。 ――ストライク! 「ストライクは白丸ですよね」 「そう」 ――ボール 「ボールは黒丸」 「そう」 ――ストライク! 「ストライクは白丸」 「いや、バツマーク」 「え、さっき白丸って言いましたよ?」 ――ボール 「ボールは……?」 「黒丸でしょ」 「え……」 ――ストライク!バッターアウト! 「ストライクはバツマークだ!」 「いや、書かないで」 「え……」 「空振り三振だから、打席結果にSOと書いて。スイングアウトのことね」 「はいぃ」 ――2番セカンド長岡 「タイムタイム!ちょっと待ってください……」 「私の写しても良いよ。それとも教える時間作る?」 「いや、ゆいなさんの手を止めるのも良くないので後ほど写します……」 1回の表の攻撃を終えてまきを見ると、あわあわしながらも一応書き終えたまきと目が合った。 「先生!質問良いですか?」  いつの間にか師匠から先生になっているが、生徒の質問を受けてみようと思う。 「どうぞ、まきさん」 「はい、ありがとうございます。まずストライクは白丸ですかバツマークですか!」 「答えは両方ですね。適宜変えてください」 「えー、そんなの聞いてませーん。私が予習したネットにはそんなこと書いてなかったと思いまーす」 「書いてあるよ絶対……。白丸は見逃しストライク。バツマークは空振りストライクね」 「なるほど、そういうことか。それと三振の時バツマーク書かなかったのはなぜですか?」 「それは、打席結果を書くからかな。もしヒットとか打ったらストライク判定は書かないでしょ?」 「なるほど、ではイニング終了時に球数を数えるときは気を付けないとですね」 「そうね、公式記録と最後に見比べるとなぜか1球少なかったりするの。どこで見落としたのか……」 「不思議ですね……」 「それとまきちゃんのスコアシートの2番打者、枠から漏れてるね……」 「そうなんですよ!あの打者ファウルで5球も粘るから、枠が足りなくて」 「ファウルを三角マークで書いてるのね。ファールは枠足りなくなりがちだから、横線で書くと良いよ」 「なるほどー。私は今日、なるほどだらけですね。勉強になります」  まきがなるほどの猛打賞を決めたところで、1回裏の攻撃が始まった。
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