第四章 乱打戦

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「私バス苦手なんだよね」 「へー、そうなんですか」 「場所によって乗り方が変わるじゃない。前のドア、中央のドア、どっちから乗るのかとか、前払いか後払いかとか、わからないじゃない」 「私バスって全然乗らないので、実はさっきゆいなさんの真似して乗りました。中央から入ってPASMOをピッ!としました。お葬式スタイルですね。前の人を真似するっていう」 「ちなみに私も前の人の真似をしたんだけどね」 「一緒ですね!そういえば紙の整理券は取らなくて良かったんですか?思わず取っちゃいました、ほら」  小さな手のひらに乗った整理券の紙をゆいなに見せてくる。 「ICカードに乗車記録を付けているから取らなくて大丈夫だと思うよ」 「あー、そうでしたかー」 「私あきたこまちスタジアムに行った時とかICカード使えなくて、初めて紙の整理券使って不安だったことあったな」 「秋田まで行ってるんですか…!」 「ちなみにZOZOマリンスタジアムは現金100円なの。球場直通のバスがあって。鎌ヶ谷スタジアムとかもそう」 「へえ、初めての球場行くと不安になりそうなんで、今後もゆいなさんと一緒に行きます!」  慕われているのかわからないが、今後もスコアを書く私の横にはまきちゃんがいそうだ。  そう考えていると平塚球場の一つ前、総合公園にバスが止まろうとしていた。  だが、何かがおかしい気が…  そう思っていると私を慕うまきちゃんが小声で話しかけてくる。 「あれ、ゆいなさん、平塚球場はは次のバス停ですよね。なんか他のベイスターズファンが準備を始めましたが……」  確かにベイスターズキャップを被った子供と父親や、ポンセのユニフォームを着た強面の男性が降りる準備をしている。……なぜポンセ。 「どうなんだろう、降りた方が良いのかな」 「ゆいなさんの"郷に従え理論"では降りるのが正ですね。こっちからの方が近道なのかもしれないですし」  考えている間にバスは総合公園に到着した。ポンセとベイスターズ親子はバスを降りていく。 「降りてみる?」 「んー、降りましょう!!」  ここはまきの直感を信じてみるか。  急いで荷物を手に持ち、後方の座席から三塁ベースを回るように急ピッチでバスから駆け降りる。 「あ、ベイスターズファンいましたよ。付いていきましょう」  まきの言葉通りポンセと親子の後ろを付いていく。するとポンセは平塚総合公園の案内図を見ている。なんだか嫌な予感。一方の親子は公園内に入っていく。  総合公園の敷地は広いようだ。プールやテニスコート、大きな広場やはらっぱなどもある。その中に野球場もあるようだ。  
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