第四章 乱打戦

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 ゆいなとまきは親子と、少し遅れて歩くポンセを見ながらゆっくりと歩く。  すると二組は次の分かれ道で違う道を歩き出した。 「あれ、どっちだと思います?」 「親子とポンセ、どっちが信用できるかな…」 「球場はおそらく公園内の端ですよね。ならば右に行くのが良いのではないでしょうか。あとポンセもいますし……。よくわからないですけど、なんかこの人の方がベテラン感があります」  今日はまきを信じてみようと右の道へ足を動かす。  大きな公園というだけあって木々の生い茂りが懐かしさを感じる。都会にいると自然を感じにくいというが確かに本当なのかもしれない。  不安と少しの冒険感覚でそのまま歩いていくと、スワローズのバスを発見した。そのまま期待を胸に早歩きで進むと、野球場らしき空間が二人の前に現れた。 「大きな広場に出ました!到着ー!」  まきが秘境の土地を見つけたかのように歓声を上げる。安堵の気持ちで回りを見渡すと、後ろに見覚えのある帽子が視界に飛び込んできた。 「あのベイスターズキャップの子、分かれ道の親子だよね」 「本当だ、どっち行っても正解だったんすか」  すると、ハーフスイングかの確認をする球審のように、まきが素早く車道側を指差す。 「あの……あれバス停じゃないですか……?」  その指の方向を見ると車道があり、反対車線にバス停が見える。今は誰も並んでいないがおそらく帰りはあそこから乗るのであろう。 ということは平塚駅から出ているバス停も手前側の車線にあることになる。 「やっぱりネットの情報を信じて、平塚球場のバス停まで待てば良かったね。ごめん」  まきが小さな体をいっぱいに使って首と体を横に動かす。 「いえいえ、最後に降りましょうといったのは私ですから。それにゆいなさんと考えながら歩いて球場を見つけられたのがとても嬉しかったですよ!共にピンチを乗り越えたバッテリーです!」  私は誰かに気を使いすぎてしまうところがある。ミスが全て自分の責任で自分にしか影響を及ぼさない一人の方が正直楽で好きだ。  まきは逆に人のミスも受け入れてそれをポジティブに捉えることが出来る。タイプは違うが、まきの性格では気を使わず、信頼しても良いのかもしれないな。  物事の捉え方で人生は大きく変わるのかもしれないと考えていると、喉元に引っ掛かっていた異物にまきが気づく。 「結局ポンセは何者だったんでしょう」  ポンセは平塚総合公園に入る際に案内図を見ていた。やはりあれは行き方を知らず調べていたのだろう。すると親子は何だったのか。  平塚総合公園内に球場があるのを知っている地元の方で、あのバス停で降りたのだろうか。それにつられてポンセと私たちも降りてしまったのだろうか。ただこれは全て憶測に過ぎないな。 「ポンセも郷に従ったのよ」
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