第四章 乱打戦

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「なんだか野球場っていう感じの球場ですね」  平塚球場。愛称はバッティングパレス平塚。ベイスターズの二軍戦で使われる以外にも、神奈川の高校野球や独立リーグも試合を行っている球場である。両翼91m、中堅120mで今日開放している内野席の収容人数は8000人となっている。 「戸田と浦和もしっかりとした野球場なんだけど、観客席が特殊な位置にあるよね。その点ここは一軍球場と同じで、グラウンドを囲むように一塁から三塁まで席があるからね」 「それに公園内だからか自然が多くて気持ちの良い球場ですねー」 今日の試合開始は18時。日が沈みつつある試合前の野球場に、爽やかで生温かいような風が吹いている。  今日のスタメンを記録してそろそろ試合が始まろうという時、前列の席に四人の団体が現れた。それぞれビールを片手にはしゃぎながら席に座る。座るというか枠に収まっているような感じだろう。  思い出したようにゆいなが声を出す。 「そういえば今日追加料金でビール飲み放題の日なんだよ」 「だからやけにビール持ちが多いのですか」  ベイスターズの二軍戦では毎年恒例でビール飲み放題企画をやっている。チケット代金に2000円上乗せすれば、飲み放題になるらしい。  ゆいなはアルコールを飲めなくはないが好んで飲むことはしない。ましてや野球観戦の時には飲んだことはほとんどない。  理由は両手がスコアブックとペンで塞がっているからだが。 「まきちゃんも飲みたかったら飲んでも良いよ。私は飲まないけど」 「うーん、野球場で飲むビールは最高でしょうが、今日はスコアを書きたい気分なのでそういうのは要らないですかね」  普段アルコールを好んでいそうなまきだが、スコアに集中したいのだろう。より野球に興味が出てきたということなのだろうか。もしかしたら私に気を使っているのかもしれないけど。
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