キャサリン

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とある豪邸。 そこには大富豪の主が、百を超える執事に囲まれて暮らしていた。 ある日、大富豪の主は一人の女性を連れて帰る。 長い金髪は手入れされていない為艶が無く、どこか顔色も悪い。 みすぼらしい服装。着ている服は所々破れ、傷んでおり、服というより布を纏っているという方が表現は合う。 また、彼女から不快な異臭が漂う。 主は執事を全員集めて、その女性を紹介する。 "――いい拾い物をした。今日から君たちの部下だ" みすぼらしい女性を見る執事たちの目は嫌悪感と、軽蔑に満ちていた。 彼女は執事たちと同じ格好させてもらい、名を与えられる。 「キャサリン」 ありふれた名であった。覚えやすい名前であったからそう付けられる。 キャサリンは他の執事から掃除を習った。 ――いや、掃除だけを習った。 豪邸は百を超える執事を養えるほどの大きさ。とても一人ではできない。 だが、それを拒む事を他の執事が許さなかった。 キャサリンは掃除をする。 朝から晩まで、掃除だけに時間を費やした。 豪邸の至る所を隅から隅まで拭き掃除に、掃き掃除。 他の執事は笑いながら言う。まだダメだと。 キャサリンは掃除をした。 朝から晩まで、掃除だけに時間を費やした。 豪邸の至る所にあるゴミを隅から隅まで一生懸命掃除をした。 バケツの水は濁り、雑巾は黒ずむ。 他の執事は暴力を振るいながら言う。まだダメだと。 キャサリンは掃除をした。 朝から晩まで、掃除だけに時間を費やした。 豪邸の至る所にいるゴミを隅から隅まで逃さず一生懸命掃除をした。 バケツの水は鮮やかに、雑巾は朱に染まる。 他の執事は震えながら言う。もうダメだと。 キャサリンは掃除をする。 朝から晩まで、掃除だけに時間を費やした。 豪邸の至る所にいるゴミを一つ残らず根絶やしにした。 他の執事は何も言わなくなった。 彼女は掃除をする。 誰もいない屋敷の中を。
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