0人が本棚に入れています
本棚に追加
医師の長い溜息は俺の耳に貼り付き、俺は心の中で一言、先生に謝りの言葉を添えていた。自ら死ぬ度胸はないが、死ねるなら死にたい。それが俺の本心であり、そしてこの気持ちは患者を救おうと若き熱血とは相容れないものだろう。侮辱された、とさえ思ったかもしれない。
どちらにしろ俺がこの病院を訪れることはもうないだろう。
急性アルコール中毒で倒れたらしく俺は気付いたら救急車でその倒れた場所近くの病院に運び込まれていたわけだが、そんな事情でもなければ俺が病院になんて行くわけがない。別に病院に行ってまで、生を長引かせるつもりもないんだから。
勧められた入院は拒絶し、検査の結果、血糖値が異常なほど高いと言われて渡された経口薬の入った袋だけを持ち、自宅に帰ってすぐに捨てたその袋が屑籠の上にあるそれだった。つい最近のことだ。だけどとても古い記憶のように感じるのは、時間の、そして生の感覚が狂っているのかもしれない。もう俺はまともな人間ではないのだ。
最初のコメントを投稿しよう!