prologue

1/1
前へ
/52ページ
次へ

prologue

 時々、あの夜のことを話した。他人にとっては至極どうでもいいことだというのはわかりきっていて、ただ、誰かに話していないとあの夜がほんとうに存在したのかうやむやになってしまいそうで怖かった。もう使わないのに消すことのできないすきなひとの連絡先に似て、一生憶えていたいと願ういっぽうで、いつか忘れてしまうとわかっている自分がいた。  だから何度でも話すのだ。
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加