僕の後悔の話

2021.9.15

　この日、俺はauショップに来ていた。理由は、2か月前に機種変したばかりのスマホが不具合を起こしたので新品に取り換えてもらった為、データの移行に来たのだ。
　頻繁に接客してくれて、仲良くなった女性店員さんを指名して接客を受けた。店員さんも気さくな人で、解らない事を聞きやすく、作業の待ち時間には雑談をしてくれて退屈はしないのだ。
　データ移行が始まり、本体初期設定をしてからデータの移行をしてくれた。その際にこのように言われた。
店員「えいちゃん様、写真が700枚近くありますよ(笑)なかなかに多いですよ！」
私「え？スマホには写真1枚も無いですよ？」
店員「スマホでは無く、auのバックアップサービス内ですね！ネット上でデータをお預かりするヤツです！」
私「なるほど～。ずっと機種変を重ねてきたからかな？でも預けた記憶無いですよ？」
店員「きっと以前に機種変された際に、バックアップ設定をされたんじゃないですかね？」
私「なるほど、てことはかなり昔の写真も出てきそうだな(笑)」
店員「良かったじゃないですか～！思い出が復元できるんですよ？」
私「まぁ別に要らないですけどね...(笑)」
昔の写真で、しかも700枚。恐らくFとの思い出の写真が大半だろう。そう直感で思った。見たらきっと後悔して泣きたくなる。だから存在しない方が良いのだ。
店員「え～そんな事言わずに～！あ、データ移行終わりましたね！」
そして少々雑談をした。
店員「実は私、このお店辞めるんですよ。」
私「え！？どうしてですか？」
店員「お店の方針が合わなくて...(笑)私が接客するお客様に伝えたのは、えいちゃんさんだけですよ。」
私「どうして教えてくれたんですか？」
店員「えいちゃんさんは、私が初めて対応してからずっとを好んで指名してくださるし、アンケート調査も良い意味で凄い嘘を並べて記入してくれますし、話してて面白いんですよ～。お店のしがらみが無ければ友達になりたいくらいですよ！だから特別にお伝えしました(笑)」
私「そうですか？何も面白くないですよ(笑)」
店員「そんな事無いですよ！実は、私の家はここなんです(笑)」
と店員さんのスマホを見せられ、画面にはGoogleマップで自宅にピンが刺されていた。しかも、私がよく行くお店の真裏で、家の前を知らない間に何回も通っていたことになるのだ。
私「え、まって、このお店めっちゃ頻繁に行くよ！俺、店員さんの家の前何回も通ってるんだね(笑)」
店員「え！？そうなんですか？(笑)じゃあもし車止まってたら居るってことだから、その時は声かけてくださいね(笑)」
私「え、声かけずらいですよ(笑)お店で客としてしか会ってないですし！」
店員「大丈夫！気軽に声かけて！(笑)」
私「わ、わかりました...(笑)」
　そうして店を後にした俺は帰宅し、バックアップされた写真を見てみた。写真は案の定、Fと付き合っていた頃の思い出の写真だった。付き合い始めた当初から、別れる事になる直前に行ったディズニーの写真までの大半が残っていた。
私「こんなん...ほぼ全部の思い出が蘇るやんか...(たまに何故か関西弁が出る)」
見返していけば行くほど、自分が生き生きしていて、顔の表情も明るい。今の俺とは正反対だ。生きている心地がせず、死にたくなるほど落ちぶれて、息を吐くかのように毎日を吐き捨てる生活。過去の自分の人生が輝いてたと思えた。
できるなら、この頃から人生をやり直したい。
ひょんな事から感傷に浸り、鬱になるえいちゃんでした。