2020年1月3日

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2020年1月3日

 とうとうこの日が来た。起きたら親父から"お年玉だ"と1万を渡された。が、死ぬ人間に金なんて不必要。私は"要らない、無くても大丈夫"と言いお金を返した。  そして夜になり外に出る支度をしていると母親から電話が来た。 母「お前今何してんの?」 私「何もしてないけど。」 母「なら今から婆ちゃん家に来い」 私「はぁ?何で今からなの」 母「良いから来い!」 そこで切れた。いつも唐突で勝手な母だ。 祖母の家は私の家と同じ住宅内に建ってて歩いて1分もかからない距離ではあった。渋々行くと、再婚した母親と義父の夫婦が祖母の家に泊まっていたのだ。母の再婚は私が中学生の頃にしており、義父とも普通に仲は良い。 私「呼び出して何?」 母「飲みにいくべ」 私「は?なんで?」 私はそれ以前はまともに酒を飲んだことは無かった。 祖母「あんた最近引きこもってばっかで外出てないんでしょ?弟やあんたん所の婆さんが心配してるよ。お母さんにお金渡してあるから、たまにはリフレッシュしてきな」 母「あたしがいつも行ってたスナックに連れてってやるよ」 そう言われ強制的に連行されたのだった。  スナックは割りと家から近いところにあった。歩いたら20~30分くらいの所だ。到着したのは22時か23時だったと思う。店に入ると、薄暗い室内に客やキャストの女性がわいわい楽しそうに話し、酒を飲んでいた。 母は慣れたように"おはよー"と言い準備されてたボックスに歩いてった。後ろをついて私も席につく。 ?「あら~Rちゃん久しぶりじゃな~い!あら若い旦那さんが2人~?あんたも隅に置けないねぇ~」 と横からオカマのような男っぽい声が聞こえた。 母「おぉー!Fちゃん!何いってんのこっちは長男だよ(笑)小学6年生の時に会ってるでしょ?」 F「えぇぇぇぇぇ!?あのメガネかけてたえいちゃん?大きくなったわね~今何歳?」 あ、思い出した。この人はオカマのFさん。 私が小6の時、朝起きてリビングに行ったら1人椅子に座ってたオカマだ。当時は何で知らない人が家の中にいるの?と思って居たが、そーゆー事か。 私「今年で23になります」 F「あら~若いわね~隣失礼しようかしら」 と言い半ば強引に横にピッタリくっついて座ってきた。まぁ母は10年以上通ってる店らしく古株のキャストとはかなり仲も良いらしい。このFさんの遠慮の無い感じもそれが原因だろう。まぁ別に嫌では無かったけど…。 代金は全部母親が持ってくれた。 酒を頼み、乾杯し、飲み始める。スナックなので当然キャストも一緒に飲む。他愛もない話をしながら酒を飲む空間。本来であれば凄く楽しいんだろう。だがその時の私は心から楽しめなかった。 母「そんな無愛想な顔で飲んでねーで笑えや!」 私「無理」 母「無理じゃねー!ほら飲め!」 私は顔をしかめてジョッキをイッキ飲みした。  次第に酔いも回り、親子で現実に帰った話を始める。 母「お前はどこで道を間違えた?その不倫の女か?お前の弱さか?お前はもっとしっかりしていると思ってた。お前が一番まともに育ってくれてると思ってた。」 私と母は酔いに任せて言い合った。 私「何だって良いじゃん、俺の気持ちは母さんには解らないよ。」 母「そんなもん言わなきゃ解らねーだろーが!何勝手に練炭なんて買ってんだよ!知らないとでも思ったら大間違いだかんな!」 なぜ母親が知ってるんだ?家の人間には誰にも知られていないはずなのに。車から自室に運ぶまでの間に目撃され、チクられたしか考えられなかった。 私「別に勝手に死のうが何だろうが良いだろ?母さんだって1度自殺未遂してるじゃんか」 母もまた、私が中学1年の時に鬱にかかっており精神科に通っていた。その際に処方されていた睡眠薬を大量服薬したのだ。 母「母親の前で普通に死にたいだのなんだのって言うんじゃねぇ!」 涙を流しながら言い争った。 F「まぁまぁ2人とも落ち着いて~。ね?今日は何か食べながらお酒飲んで酔っぱらっちゃいな~」 そう言い仲裁に入りメニュー表を出してきたオカマのFさん。 F「えいちゃんがこうして辛くても頑張って生きてるんだし、今日初来店の初回の1品だけサービスしちゃうわよ~」 母「良かったじゃん、タダだってよ?一番高いの頼んどきな(笑)」 母は態度を切り替えていた。まぁせっかく飲みに来てる訳だし、喧嘩するために来た訳じゃない。私もできる限り切り替えた。 私「じゃあ唐揚げ好きなので唐揚げお願いします」 F「ニンニクか生姜どっちがいい?ミックスもできるけど?」 ずいぶん本格的だなと思った。 私「じゃあミックスにしようかな」 F「はい承りました~。ちょっと待っててね~」 と言うと店の裏に行き注文を伝えて戻ってきた。 思えば、母親と成人してから外の飲み屋で一緒に飲むのは初めてだった。こんな状況でなければ楽しく飲めたのだろう。と思いつつも、無心で酒を飲み、カラオケを歌い、食べ物を食べた。  だいぶ酔い、明け方4時、閉店時間だ。Fさんも見送りに出て来てくれた。 F「えいちゃん、またいつでもおいでね~。いつでも話し聞くわよ。辛くなったらアタシの胸貸してあげるから~アハハハハ(笑)」 陽気な人だ。でも優しく、面白い。 私「またすぐ来ると思います。その時はFさんが自分に着いてくださいね?」 F「もちろん任せといてよ~アタシ失敗しないので!ダァハハハハ(笑)」 どこのド◯ターXだよ…。と思いながらも帰った。母親は酔いつぶれ助手席で寝たいた。運転は義父がして帰った。 私「今日はありがとね。母さんにも明日起きたら伝えといてね?」 義父「まぁ気持ちは解るけどよぉ、あんま母さん悲しませんじゃねーぞ?子供に死にたいって言われた親の気持ちも考えろな?」 私「うん…ごめん」 義父「んじゃまた後でな!おやすみ」 私「おやすみ」 私を家の前に降ろし、祖母の家へと走っていった。
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