フェアプレイ

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 会場はぶわっと膨らんだようになり、熱気は最高潮に達する。 よしっ、待ってました、よくやった、という掛け声がステージ向かっていくつも飛び、その日一番の盛大な拍手が起こった。  監督の黒瀬川がマイクの前に立つ。 「おかげ様で秋の大会は県の本戦に進んだ後、2つ勝ち進み、ベスト16に残らせていただきました。ベスト8をかけた試合ではシード校であるⅠ校を相手に4-8というスコアで、惜敗しました」  ダブルスコアではあるが『惜敗』という言葉に誰も違和感を抱かない。実際のところほとんどの者がコールド負けを予想していた。  よくやった!、大接戦だ!という合いの手が入る。 「今年のチームは主将の宮川、エースの天池を中心にかなりの力をつけてきております。次は春季大会、そして選手権(夏の甲子園の県予選)へと続きます。どうぞこれからもご支援をよろしくお願いします」  割れんばかりの拍手。  しっかり頼むぞ、という掛け声の中に、また寄付するぞ、といった声が混じる。どこからか調子に乗って、甲子園へ連れていってくれよ、という掛け声がかかると、会場に拍手と笑い声が混じった。  チームがここまでこれたのは選手の能力や監督の努力だけではない。OBらの寄付の力も大きい。  光陽学園の野球部はグラウンドとは別に校内の片隅にテニスコート一面ほどの広さの専用の練習場が整備されている。グラウンドは使えなくてもそこで毎日、ピッチング練習、内野ノック、ネットへ向かってのバッティング練習ができる。しかも部分的に雨よけの屋根もついているので、雨の日でもピッチングや素振りなどの簡単な練習には困らない。すべてOBの寄付による設備だ。  パーティー会場は例年にはない盛り上がりだ。
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