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あれから予定より30分押して出発し、今は智慧さんが運転する車で神戸へと高速を走っていた。
最初は助手席の水美さんと運転の邪魔にならない程度にテンション高く話していたけど、高級車のシートの座り心地と春の日差しがポカポカと眠りに誘われていた。
「…また寝てないんだろ?着いたら起こすから寝てろ。ほら。」
旅行前の興奮で寝付けなかった私を見抜いてる朝輝が、私を抱き寄せ肩を貸してくれた。
「…うん。そうさせて貰う。ありがとう。」
睡魔と闘っていた私は素直に朝輝の肩にもたれて目を閉じた。
「…おい、起きろ。夕凪。」
「…ん……イタイ…。」
私の寝起きの悪さを熟知している朝輝に鼻をつまんで起こされた。
寝ぼけながら朝輝の肩に預けていた頭を起こすと、ホテルの駐車場に入ったところだった。
「…着いたぞ。脳みそ起動させろよ。」
「ん?ホテル入口?ハーブ園は?」
有馬温泉まで爆睡してしまったのかもと頭が動き始める。
「…布引ハーブ園は駐車場がないんだよ。ここから少し歩いた所からロープウェイでしか行けない。ほら、行くぞ。」
車が停まると朝輝は行くぞとさっさと車を降りた。
私も慌てて車を降りる。
「ロープウェイでしか行けないって、なんかすごいね。」
話しながらホテルの駐車場を出て割とすぐにロープウェイの乗り場があった。
ロープウェイのゴンドラは全面ガラス張りでコロンとかわいい形をしていた。
朝輝と私、水美さんと智慧さんで分かれてゴンドラに乗り込んだ。
「…ここから風の丘中間駅までロープウェイに乗って山頂までは歩きだ。けっこうキツイ坂もあるから覚悟しとけよ。」
「え"………山頂まで歩き?」
昨日はそこまで布引ハーブ園の情報を見てなかったから、朝輝の説明に登山を思い浮かべて顔が引きつった。
「…まぁそんな大したことはない。途中、ハーブの足湯もあるぞ。」
「えっ!ハーブの足湯?絶対入りたいっ!」
もたらされた情報に私はワクワクとゴンドラからの景色に目を向けた。
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