5人が本棚に入れています
本棚に追加
途中、滝やダムっぽいものを見下ろしながら木々の上を空中遊泳するゴンドラ。
振り返れば山麓駅の素敵な建物と、その向こうに神戸の街並みが見えた。
そうこうしている内に、ゴンドラは風の丘中間駅に到着しようとしていた。
「ロープウェイって山頂まで繋がってるんだよね?なんで途中で降りるの?」
山頂まで登るならそこまで乗ればいいのにと不思議に思った。
「…登山もそうだが、登りより下る方が体の負担がデカいんだよ。
お前、急勾配で転けそうだしな。
降りるぞ。」
ちょっと失礼なセリフを聞いた気がするけど、降りると言われて私も慌てて立ち上がった。
「全面ガラス張りだから景色がよく見えたでしょー?帰りは山頂駅から山麓駅まで一直線だからもっと素敵な景色が見られるわよ!」
「うん!帰りは山頂から?うわー楽しみー!」
先に降りていた水美さんたちと合流すると、帰りはロープウェイで一直線だと教えて貰った。
「では行きましょうか。」
智慧さんの声で私たちはハーブ園に足を踏み入れた。
中間駅を出て最初はオープンカフェと風の丘フラワー園があった。
春なだけあって色とりどりの花が甘い香りと共に出迎えてくれる。
道なりに登っていくとオリエンタルガーデン、滝のパティオ、季節の庭と五感を楽しませてくれた。
季節の庭を蛇行しながら進むと奥にガラスの建物が見えた。
「ねぇ!あれ何?」
景色に夢中になっていた私はパンフレットを持っていることも忘れて朝輝に聞いた。
「…グラスハウスだな。あそこに足湯がある。この先のラベンダー園を抜けてからあそこに行く予定だ。」
ラベンダー園も楽しみだけど心はグラスハウスに奪われていた。
ラベンダー園に差し掛かると淡い紫と緑が広がり爽やかな香りで包まれた。
「…いい香り。落ち着く。」
目を閉じて胸いっぱいに香りを吸い込むと五感が冴え渡り、いつの間にか朝輝の腕に自分の腕を絡ませていたことに気づく。
「…ラベンダーって夏の北海道のイメージだったけど春でも咲くんだね。」
気づいた恥ずかしさに何となくそう呟いて腕を離そうとすれば、
「…今は色んな品種があるからな。」
とラベンダーを見ながら言う朝輝にそっと手を押さえられた。
歩き始めた朝輝に合わせて腕を組んだままラベンダー園を後にした。
最初のコメントを投稿しよう!