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私は下見をしていた廃ビルに侵入し、階段を駆け上がった。
運動が好きじゃなかった体はすぐに酸素を求めて勢いを落とす。
それでも屋上を目指して足を動かした。
アイツらから標的を奪うためにー。
屋上のドアを開ければ正面からの強い夕日に目を閉じ腕で覆う。
僅かに腕をずらして薄目を開ければ、澄みきった夕焼けの空が広がっていた。
「そういえば空なんて見たの久しぶりかも......。」
息が整う少しの間だけその景色に見とれる。
見とれてはいたけど、心を動かされるほどでもない。
その僅かな時間でも太陽は着々と地平線の向こうへと進んでいく。
「さて。」
屋上の端に進み、今にも倒れそうな錆だらけの柵を乗り越えた。
柵を背にしても不思議と恐怖は感じなかった。
あるのは、たぶん…恨み?なのかな。
それすらもよくわからなくなっていた。
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