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「…腹減ったな。上のレストランでメシにするか。」
みんな靴を履き終えるとご飯にしようと朝輝が言い出した。
私が寝坊したせいで少し昼時を過ぎていた。
来た道を戻らずグラスハウスから右手の階段を昇って山頂へと続く道に出て、ハーブミュージアムを横目に歩くと山頂駅に着いた。
山頂駅の隣にはヨーロッパを思わせる建物があった。
「素敵な建物…。」
「…ドイツの古城、ヴァルトブルク城をモチーフにしてるそうだ。」
「へぇ、ドイツのお城なんだ。なんかヨーロッパ旅行してる気分になるね。」
建物を見上げながら朝輝に腕を引かれレストランへと足を運んだ。
メニューを朝輝に任せると前菜スタンドなるものが運ばれてきた。
色鮮やかな花やハーブがスタンドを飾っていた。
「きれーい!……これ食べられるの?」
食べられない花を食べて朝輝に恥をかかせるのはダメだと、こっそり朝輝に尋ねる。
「…ああ、Edible flowerだから食える。」
「ん?エデボフラワー?」
突然、発音いい英語で言われ聞こえた言葉をオウム返しした。
「フッ。夕凪ちゃん…。エデボじゃなくて……。
日本語発音だとエディブル、食用って意味よ。Edible flowerで食用花ってこと。」
一瞬ツボりかけた水美さんが小声で説明してくれた。
「水美さん今、ツボりかけたでしょ……。二人とも発音良すぎて聞き取れなかったんだからしょうがないでしょ!
でもこの花、食べられるんだね。」
私はむくれながらも食べられると聞いて安心した。
「奥様、日頃飲まれるハーブティーも出がらしは捨てると思いますが食すことも可能なのです。
そうすることで煎じ液では摂取しきれない成分も、その植物が持つエネルギーも摂り込むことができます。
私たち一族はこの植物のエネルギーを利用して一族の力が必要ないお客様にハーブティーとしてご提供しております。
日本ではあまり馴染みがありませんが、イギリスではフラワーレメディと言って植物のエネルギーを写し取ったものが生活の中に広く取り入れられているんですよ。」
密かに笑いを堪える二人の代わりに智慧さんがそんな話をしてくれた。
「へぇ、そーなんですね。フラワーレメディなんて初めて聞きました。」
「奥様はハーブ園に来られてから心が安らぐなど何か感じませんでしたか?」
何か感じなかったかと聞かれて、真っ先にラベンダー園のことを思い出した。
「あ、ラベンダー園ですごくいい香りで落ち着くなーって。他にも色んな花の甘い香りがして幸せな気分になったかも。」
ラベンダー園と共に他のエリアも思い出しながら感じたことを口にした。
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