5人が本棚に入れています
本棚に追加
「天宮様、高宮様ようこそおいでくださいました。
いつも御贔屓に誠にありがとうございます。」
出迎えてくれた着物の女性が挨拶して頭を下げた。
「…女将さんご無沙汰してます。
この度、私も妻を迎えまして新婚旅行にこちらへお邪魔させて頂こうと思いましてね。
妻の夕凪です。共々、今後もお世話になりますので宜しくお願いします。」
よそ行きの話し方で喋る朝輝の隣で縮こまらないよう姿勢を意識しながら大人しくする。
「まぁ!ご結婚おめでとうございます。
奥方様、お目にかかれて光栄でございます。私は “ せおり ” の女将を預かっております華海と申します。こちらは夫で支配人の桐月と申します。
どうぞ宜しくお願い申し上げます。」
「天宮様、ご結婚、誠におめでとうございます。
桐月と申します。どうぞ宜しくお願い申し上げます。」
女将さんと夫の支配人さんが挨拶をしてくれた。
腰に添えた朝輝の手がぽんと合図を送ってくれた。
「お初にお目にかかります。この度、天宮家へ入りました夕凪と申します。どうぞ御見知り置き下さい。」
何とか噛まずに挨拶を終えた。
「素敵な奥方様でいらっしゃいますね。
では、お部屋にご案内致します。さっ、どうぞこちらへ。お足元にお気を付け下さいね。」
女将さんが案内すると言うと支配人さんは智慧さんから車の鍵を受け取り乗り込んだ。
私たちは女将さんに続いて門を潜った。
門の中は正面の建物が長屋のように左右奥まで続き、建物と築地塀の間の庭は木がたくさん植えられていて間に石畳が敷かれている。
木の根元はこんもりと盛り上がり、青々とした苔がキレイに生えていた。
ちょうど半円の苔玉を大きくしたような感じで、それが小道の両脇にいくつもある。
そこを抜けると石垣の上に瓦屋根を乗せた木板で作られた塀と棟門が現れた。
門を抜けると石畳が大きな平屋2つの間に小さな平屋、それを繋ぐ渡廊下の建物へ続いていた。
「こちらはごく限られたお客様だけをお迎えする玉響の間でございます。
左側が長様と奥方様のお部屋。
右側が助役様と高宮様のお部屋でございます。
それぞれのお部屋から中央の談話室に渡れるようになっております。
お茶をご用意致しますので、どうぞ談話室へお越し下さいませ。
お荷物は後ほど支配人がお届けに上がります。」
朝輝と水美さんを長、助役と呼び方を変えたってことはここも一族御用達ということなのだろう。
女将さんは初めての私のために説明してくれたようだった。
最初のコメントを投稿しよう!