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「もうこんなに暗くなってたんだね。」
「えぇ。お食事の時間にございますよ。何か考え事でもされておられたのですか?」
良い匂いを引き連れて側に来た詠龍彦さんは手際よく器を並べながら尋ねてきた。
「うん。………ねぇ、詠龍彦さんは今日のこと、結世さんから聞いてた?」
予め聞かされていたのか詠龍彦さんに確認を取る。
「……申し訳ございません。聞いておりました。」
「あっ、違うの、責めてるわけじゃないの!」
すまなそうに頭を下げようとする詠龍彦さんを止めた。
「聞いてるなら経緯は省いていいかの確認だから。」
そう言うと困ったような何とも言えない苦笑いを向けられた。
「詠龍彦さんも苦労するね。」
そう笑って、今日あったこと、整理しきれない気持ちを考えていた事を話した。
その間、詠龍彦さんは頷きながら黙って聞いてくれた。
「そうですね。気持ちというものは移ろうものであれど、表を裏、裏を表と返すようにはいかないものにございますからね。
時間をかけて整理していけばよろしいのです。それが奥方樣の報いではないでしょうか。」
詠龍彦さんの言葉がモヤモヤをストンと落とした。
結世さんが終わりと言ったから、それで終わりだと思っていたけど、そうだ。
報いが終わったわけじゃなかったんだ。
「そっかぁ。……うん、そうだね。ありがとう詠龍彦さん。スッキリした。」
一人、納得してヒントをくれた詠龍彦さんにお礼を言う。
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