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妖(あやかし)
『妖』という存在が、この世界にはいる。
それは普通、多くの人間の目に映ることはない。だから、認識されることがなければ、彼らに『妖された』ことにも簡単には気づけない。気づけないまま、理不尽に呪われた人生を送る者が、少なからず世の中にはいるのだ。
そんな不平等を解消するため、僕らがいる。その名も『掃討士』。妖を駆除することを生業とするため、そう呼ばれているのだ。
『掃除屋』という俗称もあるけど、僕はそっちの通り名は嫌いだ。何だか掃除業者みたいじゃないか。僕の師匠でもある祖父は、『掃除屋』のほうが気に入ってるようだけど。
それはいいとして、世の中の九割九分の人間は、僕らを胡散臭いと疑っているだろう。逆の立場なら僕だってそう思うし、いまだに自分が掃討士だなんて信じたくはない。
なぜなら僕自身も、巻き込まれた側の人間だからだ。妖されて呪われて、仕方なくこの世界に飛び込んだ人間だから。家系を恨んだことさえある。
とにかく――僕は嫌々ながら、細々と妖退治をして、水面下で世の中を正してきた。少しだけ自分の運命を呪いながら。
そしてまた、僕は新たな妖の影を見つけることになる――。
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