妖(あやかし)

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「少し考えたら矛盾に気づいたよ。名雪さんいったよね、最近お母さんは外出してないって。それから、名雪さんが定期的に片づけに来てるって。もしこの二つが真実なら、この家にゴミが増えるはずはないんだ」  (あやか)された本人が外出せず、そうでない人物が片づけをするなら、ゴミはどこからやって来る?  少なくとも、玄関先までゴミ袋が溜まるようなことにはならないはずだ。 「ここに住んでるのは、名雪さんだけなんだよね? いや、住んでるっていう表現もおかしいのかな? 勝手に居着いてる。住み着いてる。ポストに郵便物がなかったのは、今この家は正式には空き家扱いになっているから。玄関に靴がなかったのも、ここにお母さんが住んでいない証明になる。引き戸にも鍵がかかってたしね」  母親の所在はわからないが、両親の別居の発言自体が(あやか)された影響だったのだとしたら、そもそも別居すらしていないのかもしれない。もしくは(あやかし)が彩加に移ったタイミングで両親が和解したのか――。  とにかく今、(あやかし)は名雪彩加に取り憑いているのだ。この場所に住み良い世界を構築するために。 「そして、名雪さんの掃除好き――いや、ゴミ収集癖というべきかな――それは(あやかし)がそう仕向けていた――」  それなら、彼女の掃除へのこだわりにも納得がいく。片づけていたように見せて、実は真逆の空間をこの場所に形成し続けていた。お母さんの幻を隠れ蓑にしていたのは、まさに彩加が(あやか)された結果だろう。  さて、種明かしはこれくらいにして、そろそろ本職に戻らなくては。  目前の彩加の表情が、妖しく歪んだように見えた。
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