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※※※
「あっ、神宮くん、それ外に出しといて」
「あ、はいはい。これね――」
――って、なぜか部屋の片づけを手伝わされてる!
不要物を庭に運び出すと、そこにこんもりと小さなゴミの山ができるほどの量になった。
妖を退治したあとの彩加は、すぐに正気を取り戻した。母親の幻影を見ていたことも、ゴミを持ち帰っていたことも、はっきりとは覚えていないらしい。おそらくこの家に来るときの彩加は、妖に精神を操られていたのだろう。
一通り作業を終えた頃には、すっかりと日が落ちてしまっていた。二人して近くのコンビニへ行って、彩加はお礼のコーヒーと肉まんを奢ってくれた。
「ありがと。助けてくれて」
彩加はいった。回りくどさのないストレートな謝辞は、単純に僕を喜ばせた。人間の領域を越えた特殊な仕事ゆえに、普段はこんなふうに感謝されること自体が珍しいからだ。
でもこうしてお礼の言葉を聞くと、まだ頑張ろうという気になれた。
「言い訳じゃないけど、お母さんが片づけられなくなってたことと、あたしが掃除好きなのは嘘じゃないからね?」
釘を刺すようにいう。
「わかってるって。たぶん最初に妖されたのはお母さんで、そのあと名雪さんに移ったんだと思う」
きっかけを考えるなら、あの家屋を妖が認識したタイミングだろうか。そこを住みかにしようと画策したのだろう。彩加を選んだのは、肉体的な若さを求めたのかもしれない。
肉まんを頬張る。仕事終わりに、寒空の下で食べるのはまた格別だった。
「はあ……けっこう疲れたなあ」
妖退治に掃除と、今日はよく働いた。
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