妖(あやかし)

7/12
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
「ウチ、それが原因で両親がいろいろあったんだ」  今度こそ本当に、軽々しく相槌できなくなった。 「――中学一年のときかな? 家にゴミが溜まるようになって――あたしとお父さんがすぐに対処しなかったのも悪いんだけど、ご近所トラブルになっちゃってね」  当然ながら、両親は揉めた。父親はしっかりしろと激怒し、母親も散らかしているつもりはないと主張した。たぶん、(あやか)された母親は、自分の行動を認識していなかったのだろう。  そこから居を移す流れになったという。ただ、予想できたことであるが、問題は繰り返された。 「転居先もまた、ゴミが溜まるようになって。それからは住むとこを転々と。そのうち家族は別居みたいになって。――その(あやかし)がお母さんに憑いちゃってるからってことなんだよね?」 「そうだと思う。だから退治しないと、終わらない」  そしてその影響が、娘の彩加にまで及ぼうとしている。早急に手を打たなければ、名雪家は陥落してしまうだろう。 「お母さん、家にいるのかな?」 「うん。いるよ。最近はあんまり外に出なくなったんだよね。ゴミが増えてるって自覚があるのかも」 「今でも増え続けてる?」 「うん。あたしが定期的に行って片づけてあげないと――」 「そうか……」  ん? なんだろう?  頭の中に、わずかな違和感――。  ふと前を見ると、歩道に空き缶が転がっていた。近くに自動販売機は見当たらない。誰かが歩き飲みして捨てたのだろう。  通り抜けるとき、彩加がそれを拾い上げた。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!