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「ウチ、それが原因で両親がいろいろあったんだ」
今度こそ本当に、軽々しく相槌できなくなった。
「――中学一年のときかな? 家にゴミが溜まるようになって――あたしとお父さんがすぐに対処しなかったのも悪いんだけど、ご近所トラブルになっちゃってね」
当然ながら、両親は揉めた。父親はしっかりしろと激怒し、母親も散らかしているつもりはないと主張した。たぶん、妖された母親は、自分の行動を認識していなかったのだろう。
そこから居を移す流れになったという。ただ、予想できたことであるが、問題は繰り返された。
「転居先もまた、ゴミが溜まるようになって。それからは住むとこを転々と。そのうち家族は別居みたいになって。――その妖がお母さんに憑いちゃってるからってことなんだよね?」
「そうだと思う。だから退治しないと、終わらない」
そしてその影響が、娘の彩加にまで及ぼうとしている。早急に手を打たなければ、名雪家は陥落してしまうだろう。
「お母さん、家にいるのかな?」
「うん。いるよ。最近はあんまり外に出なくなったんだよね。ゴミが増えてるって自覚があるのかも」
「今でも増え続けてる?」
「うん。あたしが定期的に行って片づけてあげないと――」
「そうか……」
ん? なんだろう?
頭の中に、わずかな違和感――。
ふと前を見ると、歩道に空き缶が転がっていた。近くに自動販売機は見当たらない。誰かが歩き飲みして捨てたのだろう。
通り抜けるとき、彩加がそれを拾い上げた。
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