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彩加の母親が住まうという家は、古めかしい造りの立派な家屋だった。玄関までにずいぶんと距離がある庭が付いている。いわく、祖父母が残した土地と家屋らしい。
庭が広いということもあって、ここでは異臭トラブルが起こっていないのだろう。
しかしながら、内部からは禍々しい雰囲気が伝わってきた。間違いない。妖の気配がある。
玄関先まで着くと、そこに備え付けられたポストが気になった。覗いてみると、中は空だった。葉書の一つもない。
彩加が玄関の鍵を解錠した。玄関の引き戸を開くと、むっと充満した何ともいえない臭いが鼻を襲った。玄関にすでに、いくつかのゴミ袋がある。溜まっている。下駄箱に靴はなく、代わりに不要品が散乱していた。
彩加は、さっき道路で拾ったままになっていた空き缶を、ゴミ袋の一つに投げ入れた。
「名雪さんが片づけてもこれなんだ――?」
「そうなんだよねー。やってもやっても、全然減らないっていうか……」
彩加は釈然としない反応をした。
ふむ、もしかすると――。
予感は当たっているのかもしれない。カラクリが少し、解読され始めた感触がある。片付けても片付けても減らないゴミ。それはつまり、根本的な部分で大きなミステイクをしているからだ――。
だが確証はまだだ。そのためには、妖本体を引きずり出すしかない。
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