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「外、寒そうだね」  ミカの手がナオの手の中に潜り込んできた。握り返すと、柔らかく、肌に吸い付くようなしっとりとした熱が、触れ合ったところからじわじわとナオの体温を侵食する。 「もうすぐ初雪だって。ママが言ってた」 「本当? やだなぁ、朝起きられなくなっちゃう」 「ミカ、寒いの苦手だもんね」  階段を降り、昇降口に近付くにつれて気温がだんだんと下がっていく。それにつれて、暖房で暖められてぼんやりとしていた頭と体が目覚めていく感じがした。まるで体の内側を冷たい水で洗われるみたいに。 「ナオは、冬が好きなんだっけ」 「うん」  靴を履き替えるとき、ミカと繋いだ手が離れると、ナオは急に寂しくなった。わずかに残るミカの温もりの欠片を留めておきたくて、ナオはぎゅっと手を握りしめた。  木枯らしは、昨日よりも寒さのレベルをひとつ上げたようだった。ナオもミカもマフラーに顔を埋めるようにして、手をブレザーのポケットに突っ込んだ。冷たい風に晒される素足は、軽い電流が走っているようにちりちりした。  学校から駅まで歩いて約二十分。そこでミカは電車に、ナオはバスに乗る。スマホで確認した時刻から計算すると、急いで歩けばミカがいつも乗る電車に間に合う。けれど、こんなとき、急ぐという選択をしないのがミカ。  電車を一本か二本遅らせて、おしゃべりしながらのんびり歩いたり、駅ビルをぶらついたり、カフェやハンバーガーショップでだらだらと時間を過ごしたりするのが、二人の日常だった。  けれど、その日のミカは、ナオが「どっか寄っていく?」と聞いたとき、首を横に振って、心持ち足を速めた。
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