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 バスターミナル近くのコンビニに、まるで押しくらまんじゅうでもするようになだれ込んだ。みんなは狭い店内にばらばらと散らばって、あちこちで声を上げる。 「あー、新商品じゃん。ねぇ、お金半分出すから、誰か一緒に買わない?」 「げ、このコラボ商品って今日からだっけ。金欠なのにー。でも全種類集めたーい。みんなも協力して! お願い!」 「この表紙の〇〇くん、神じゃん! ねーほら見てよ! やばくない!?」  我が物顔で店内を蹂躙する女子高生たちと、棚に並ぶパンやおにぎりと同化してしまったようなバイトの青年は、お互いがお互いを無視し合っていて、同じ世界に生きているとは思えないくらいだ。  けれど、本当はどちらも相手を意識しすぎてそうなっているんだと、ナオは知っている。  これは、「興味ありませんよ」「気にしてませんよ」がマウントを取る手段になる世代の、静かなる闘争。 「ほらほら、肉まん買いに来たんだってば」  バスの時間が迫って、しびれを切らしたナオが声を掛けた。すると、忘れていたわけでもないくせに、みんなは「そうだった」みたいな顔をして、中華まんのケース前に集合する。 「やっぱ肉まんっしょ」 「あたしピザまん!」 「この塩豚まん、ちょー気になる。あ、でもチョコまんもいいかな」 「あんた期間限定に弱すぎだから」 「いや、誰かあんまん頼んでやれって。可哀想じゃん、めっちゃ残ってるし」  大騒ぎしながら、一人ずつ会計をしていく。そのたびに、青年は面倒くさそうな顔でレジを打ち、ケースから肉まんやらピザまんやらを取り出して袋に入れる。それを何度も繰り返し、中華まんのケースは、あんまんだけを残して空になった。  入ってきたときと同じように、みんなでわーわー騒ぎながらコンビニを出た。ナオがちらりと振り返ると、青年はカウンターの中で、どこかホッとした表情を浮かべていた。
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