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「みんなして肉まん食べるとかウケるんだけど」 「写真撮ろ!」  誰かがスマホを構えると、みんなは自然に顔を寄せ合って表情を作る。ぱしゃっと軽い音がして、一瞬が切り取られる。 「これ盛りすぎでしょ、やば」 「いーじゃん、可愛いは正義!」  一緒になって小さな画面をのぞき込みながら、ナオはミカのことを考えていた。ミカはあまり写真を撮らない。 「忘れちゃう思い出は忘れたほうがいいんだよ。その分、もっと大切なものを大事に取っておけるから」  それを聞いて、ナオはスマホのフォルダにあった写真のほとんどを処分した。  どんな一瞬さえも失うのを恐れるように写真を撮りまくる『親友』たちはきっと、ミカや自分と違って、大切なものとどうでもいいものの区別がつけられないんだ。  そんな優越感を悟られないよう、ナオは肉まんに口をつける。 「あれ、もうバス来てるじゃん」 「ちょっと、出発まであと二分しかないんですけど」 「急げー!」  誰かが食べかけの肉まんをゴミ箱に投げ捨てた。ちょっとー、ひどくない? なんて笑いながら、みんなも次々とゴミ箱に放り込む。  ナオも、まだ二口しかかじっていない肉まんをそっとゴミ箱に入れた。これなら、残っていたあんまんを買ってあげたらよかったな。 「まあ」  背後から怒りを含んだ声が飛んできた。  振り返ると、ぼわぼわした黒いダウンコートを着た白髪の女性がこちらをにらみつけている。まるでペンギンのように着ぶくれしたその女性はわざとらしくため息をついて、信じられない、とでも言うように首を横に振った。  早く行こう、と誰かが小さく言って、みんなは逃げるようにバスに向かって走り出す。  その女性の前を通り過ぎるとき、ナオは誰にも聞こえないように、ごめんなさい、と小さく呟いた。ミカと一緒だったら、絶対にこんなことにはならなかったのに。
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