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 全員がバスに駆け込んで、つり革につかまったのとほとんど同時にバスが動き出した。窓から見ると、ペンギンおばさんはコンビニの前からまだこちらをにらんでいる。 「ちょっと、あのおばさんまだこっち見てるんだけど」 「え、やば。学校に苦情でも入れるつもりなんじゃない?」 「暇人かよ」 「あれでしょー。世の中には食べたくても食べられない人がいるんですよ! とか言っちゃうやつ」 「だったら自分が寄付でもなんでもして世界救ってやればいいじゃんね」  みんなとペンギンおばさんの悪口を言い合いながら、ナオはマフラーを少し緩めた。バスの中は暖房がききすぎて暑いくらいで、さっきまで寒さに晒されていた素足が急に暖められたせいでむず痒くなる。 「てかさー、ずっと聞きたかったんだけど、なんであの子と仲いいの?」  気が付くと『親友』たちが全員ナオを見ていた。 「あー、あたしもそう思ってた。あの子ってなんか、可愛い子ぶってるっていうかさ」 「そうそう。しかも天然ちゃんとか不思議ちゃんぶってる感じ?」  ぶってる。  ミカを表現するのに、この言葉がよく使われた。  けれど、それの何が悪いのか、ナオにはよく分からない。純度百パーセントの「本当」じゃなければ嘘、だなんて、あまりにも横暴だ。たとえミカが嘘を内包した存在だとしても、それのどこがいけないんだろう。  黙り込んだナオに、『親友』たちは慌てたように言葉を続ける。 「まあ、別に嫌いってわけじゃないんだけどさ」 「わかる。なんかね」 「うん、ちょっとねー」  まあ、なんか、ちょっと。『親友』たちの濁した言葉にナオは苛立った。そんな鈍い言葉じゃ、何も切り取れない。
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