第1話~お買い物に行こう!~

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 本屋を出てからは学校で必要な小物類を買い込み全ての品を手に入れた頃には辺りは少し日が傾いていた。もうこんな時間になったかと思いながら街を進む。あとは買った品を寮の俺の部屋に置けば買い物は終了だ。  寮からほど近い場所にある建物。何かの店のようだがまだ開店はしていない。だが開店は近いようで椅子や机が運び込まれている。  1階建ての建物でダークグレーを基調とした落ち着いたお洒落な外観だ。入り口上部に何か書いている。おそらく店名だと思うが【レイ・フィーネス】。この単語には聞き覚えがあった。音楽の曲名だ。パーティーでよく演奏される楽曲で俺も何度も聞いたことがあるもの。  何故この名前なのかは分からないが、運び込まれているものや名前からすると飲食店だろうか? 「おお、ここなら何度か仕事で来ましたよ。」 「へぇ~そうなんですか?」 「ええ、色々な資材を運び込みました。多分食堂かなんかだと思いますよ。」 「たしか、フィオーニって家のお嬢さんがこの店やるんだとか言ってましたね。」  ラビーはこのレイ・フィーネスでも便利屋として何度か仕事をしたらしい。そして彼が運んだものからしても飲食店っぽい感じらしい。そして更にラビーはこの仕事はフィオーニ家の仕事だと言った。俺はその言葉を聞いてラビーに話を聞こうとした時 「ロートリース様!」 「ペティさん。」 「お久しぶりです。」  聞き覚えのある声が飛んできた。俺はその方向に顔を向ける。すると立っていたのはやはり俺が知っているそして今準備している店、レイ・フィーネスの代表のペティ・フィオーニの姿だった。 「し、知り合いだったんですか?!」 「ええ。ペティさんとは同郷で向こうの学校の同級生だったんですよ。」 「あっ。たしかこの前にお手伝いしてくださった、便利屋さんのラビーさんですね。ご無沙汰してます。」 「お、覚えててくださったんですか。」  ラビーは驚きの連続だったようだ。俺とペティが知り合いであること、ペティが自分を覚えていてくれたこと。彼曰くラビーが働いている時にたまたま視察で彼女が来て、その際に一言二言言葉を交わしただけだったそうだが、それでも覚えていてもらえたことに感激していた。 「こっちに来るとは言ってたけどこんなに近いとは思ってなかった。」 「はい。ファンデン様がおっしゃってたお店でしたら学生の方が特に来て下さると思ったので、学生寮に近い土地を選んだんです。」 「なるほどねえ。」  せっかく再会したのでペティと少し話したいとラビーに言い、少し待ってもらうことにして彼女のお店の入り口の近くまで歩いて行き話す。俺が卒業式のパーティーの日に提案したカフェ形式の店を始める事にしたようで、それに見合った立地を選んだとのことだった。 「そうか。【『カフェ』レイ・フィーネス】……。」 「かふぇ……?」 「あ、あぁ……えーっと。そうだ!カーフィーを出すお店だからカフェ、かなって。」 「……??よく分からないですけど、カフェ!いいと思います!」  思わず元の世界の言葉が出てしまった。少なくとも知りうる限りはカフェ形態の店は無いし、仮にあったとしてもカフェという名前ではないだろう。だがペティはそのカフェという単語が気に入ったようで、レイ・フィーネスの形態はカフェだと名乗るらしい。 「ところで名前だけどどうしてレイ・フィーネスにしたの?」 「えっ?!えーっと。す、好きだからです。レイ・フィーネスが。」 「ふ~ん。ああそういえばペイツの時もレイ・フィーネスが演奏されてたね。」 「そ、そうですね。」  ついでに気になっていた店の名前についても尋ねてみた。何故か顔を赤くしながら言葉に詰まるペティ。そして絞り出すようにレイ・フィーネスが好きだからだと答えた。  そしてペティとレイ・フィーネスが結びつく出来事といえば卒業式パーティーのペイツの会場でも演奏されていたというところだ。ペイツでは俺と彼女はパートナー同士になって参加したので当然同じ場所で聴いていたので彼女も覚えていた。 「いつくらいから開かれるの?」 「まだお店の備品と商品が来ていませんけど、もう少しで開けると思います。」 「そうかぁ。開いた時は必ず行くから。」 「はい!楽しみに待ってますね。」  俺はひとまずペティに別れを告げ、ラビーの元へ行く。そして彼と共に寮の方に戻り、購入した物を自分の部屋に置き解散した。 「今日はお世話になりました。」 「いえ、また機会がありましたらお願いします。ロートリースさん。」  俺は彼とガッチリと握手して別れを告げた。
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