episod 2

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episod 2

2か月後。 カランと小さな音を立てて開くドアを、パッと振り返る。 「お疲れ様、龍也」 そこには迎えに来た理人が立っていた。 手短にママに挨拶を済ませ帰ろうとすると背中に声がかかる。 「リュウ君、明後日は盛大にお祝いするからね!」 そう言ってVサインを作って笑顔を見せるママは、もうすでに気合が入っているようだった。 帰宅して翌日の予定を確認すると、その日はすぐに眠ることにした。 明日は大事な日だから。 どきどきとわくわくでにやける龍也を、理人はずっと温かい目で見ていてくれた。 くすぐったさに目を覚ますと理人が頬を撫でていた。 「おはよう、龍也」 いたずらっぽく笑う理人と目が合う。 「おはようございます、理人さん。くすぐったい・・・」 ふふっとじゃれながら体を起こしてキッチンに向かい、いつものように二人で朝食の準備をして食事をとる。 食後のコーヒーを飲み終わると、もうドキドキしてきた。 着替えの最後に、誕生日にもらった時計を付けていると書類を持った理人が近づいてくる。 「準備できた?」 そう言って触れるだけのキスを落とす。 「じゃあ行こうか」 ん、と返事をすると手を引かれながら部屋を後にした。 平日の区役所はそれほど混んでいなかった。 婚姻届けを提出し名前が呼ばれるのを二人で待つ。 もう少しで・・・ ドキドキして落ち着かない気持ちで待っていたその時、声がかかった。 「雨宮さん」 理人と二人で立ち上り窓口まで向かう。 「手続きは以上になります。ご結婚おめでとうございます」 そう言われ新しく渡された保険証を受け取り、名前を見る。 【雨宮 龍也】 本当に、理人さんと結婚したんだ・・・ じわじわと実感がこみあげてくる。 保険証を手に、理人を見上げると優しい瞳とぶつかる。 見つめて笑いあい、手を繋ぎながら区役所を後にした。 その後は結婚指輪を見に行った。 目当てのお店に行き何点か試着をしてみた。 カタログには載っていなかったものもあり、迷ってしまう。 店内をいろいろ見て回っているとふと、目に留まった指輪があった。 それは二つの円が重なっていて、円に沿うようにダイヤが埋め込まれたデザインだった。 その指輪をじっと見つめていると理人が近づき、スタッフに声を掛けてくれる。 試着をさせてもらうと、それはとても指に馴染む感じがした。 幅が細身で内側が丸くなっているので指あたりがいい。 ダイヤも大きすぎずさりげない煌めきで上品だ。 試着した指を見つめていると理人が声を掛ける。 「龍也、凄く似合ってるよ。それにしようか」 そう言って微笑む。 理人の指輪の試着も済ませ、成約手続きをするために席に向かう。 オーダー品のため2週間ほどかかるらしい。 「内側に刻印を入れられますが、どうなさいますか?」 結婚記念日やお互いのイニシャルを入れるお客様が多いですね、と説明してくれる。 じゃあ、日付とイニシャルにしようか、と理人が成約書の刻印欄に記載しているときにある事に気が付いた。 (あ・・・俺と理人さんって) 二人とも同じ「R」のイニシャルだ。 同じデザイン、刻印も全く同じ指輪。 偶然だけれど特別な気がした。 理人の、早く出来上がるといいね、の言葉に大きく頷いた。 揃いの指輪を、早くつけたい。
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