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episod 5
お店に行くとママが笑顔でこちらに向かってくる。
「リュウ君!結婚おめでとうー!」
今日は盛大に祝うと言っていたとおり、店内にはカラフルな風船や花が飾られていた。
メニューボードには Happy Wedding の文字が描かれている。
「ママ、ありがとう!」
常連には、今日は龍也の結婚記念のパーティーだと伝えてあったらしく、みんな龍也たちにお祝いの言葉をかけてくれた。
ケーキを食べ、写真を撮り、賑やかな時間が過ぎていく。
少しして落ち着くと、カウンターの端で理人と二人になった。
「本当にいい人たちだね」
客席を眺め静かにつぶやく。
バイトを始めた時から2年、みんな変わらずにそれぞれのペースで通い続けてきてくれている。
まだ何もできなかった龍也を、あたたかく見守ってくれた。
「龍也がいい子だからだよ」
いつも一生懸命で、頑張り屋さんな龍也のことをみんな大切に思ってくれているのだ。
ママがゆっくりこちらに来る。
「リュウ君、理人。改めて、結婚おめでとう」
笑顔で二人ともお礼を言う。
「ママのおかげ。ここで働いてなかったら、理人さんとも出会えなかったし」
優しいママのおかげでここまで働くことが出来たのだ。
「俺からもお礼を言うよ。龍也のことでいろいろ悩んでいた時、ずっと話を聞いてくれた。本当にありがとう」
龍也が息子だと分かった時に、思い悩む理人を支えていたらしい。
一度は手放そうと決めた。
でもどうしても諦められなくて手を伸ばした。
その手を、龍也はしっかりとつかんで一緒に歩くことを決めた。
二人だけの力ではここまで来ることは出来なかった。
色々な偶然や選択の結果、今こうして最高の幸せを手にすることが出来たのだ。
何があっても大丈夫。
たとえ躓いても、もう一人じゃない。
理人がそばにいてくれる。
それだけで、また立ち上れる気がする。
「理人さん」
微笑んで愛しい人の名を呼ぶ。
「大好きだよ」
そう言って抱き着いてキスをした。
今度は理人に強く抱きしめられる。
「俺も。愛してるよ、龍也」
たとえ許されない関係だとしても。
それでも、君を愛してる。
End
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