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episod 1
「あら、リュウ君!なによそれ!」
プロポーズを受けた翌日、指輪を付けたまま出勤したら目聡いママにすぐに指摘された。
「実は・・・理人さんにプロポーズしてもらって」
と照れながら話すと、ママはきゃあと小さく叫び龍也の手を取りぶんぶん振った。
「素敵じゃない!ねぇ、どんなところでプロポーズされたの?なんて言われたの?」
凄いテンションで矢継ぎ早に質問してくる。
なんとなく二人だけの秘密にしていたくて口ごもっていると、啓介さんが声を掛けてくる。
「ママ、リュウ君困ってるよ。それに、そういうの聞くのは野暮だよ」
優しい口調でそう言ってくれた。
「だって、理人がどんなことしたのか気になるんだもの」
理人とママは高校からの同級生だ。古くからの友人として気になるらしい。
そっとしといてあげなよ、という啓介の言葉にママはそれ以上は突っ込んでこなかった。
その日もお店が閉まるころに理人が迎えに来てくれた。
「龍也、お疲れ様」
店に入りこちらに向かいながら声を掛けてくる。
「理人さん。お疲れ様です。お迎えありがとうございます」
そう言いながらカウンターから出る。
理人が来た事に気付いたママがすぐさま理人に問い詰める。
「理人、あんたやっとリュウ君にプロポーズしたのね!ね、いつ結婚するの?」
昨日プロポーズされたばかりだというのに、もう結婚の話をしている。
「俺はすぐにでもしたいと思ってるけど。龍也はいつがいいとかある?」
特にこの日がいい、というのは考えていなかった。
「俺はいつでも。理人さんがしたいと思った日で」
本当は1日でも早く籍を入れたい、という気持ちは内緒にしておく。
「そっか、じゃぁ・・・。また後で話そうか」
そう言ってママをちらりと見やる。
「あ!また内緒にしようとして~。結婚したら言いなさいよ!またみんなでお祝いしなきゃ!」
わかったわかった、じゃあまた。と苦笑しながら店を出た。
その日の夜、眠りに落ちる前に理人に話しかけられた。
「入籍の日は、2か月後にしようか」
言いながらそっと頭を撫でてくれる。
何月何日に、と告げられた日は龍也も覚えている。
その日は初めてお店で理人と出会った日だ。
「うん!」
答えた龍也にキスをする。
「じゃあもう今日はおやすみ」
「うん。おやすみなさい、理人さん」
2か月後のことを楽しみにして眠りについた。
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