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「さしより中に運べ」
「あそこん水ば掛けよう」
そんな言葉が僕の周りで話されている。それと合わせて僕は手を引かれて再び、少し小さな鳥居をくぐり、少し小さな狛犬を見て、手水舎に連れて行かれた。
「早う水ば掛けろ」
「火ば消しゃんば」
柄杓でジャバジャバ水を掛けてもらい、燃え上がっていた僕の右手の火は消えた。そのかわり、焼け焦げた手袋と無残な僕の右手が僕の目に飛び込んできた。遠くから聞こえる救急車のサイレンが近づいてくるのと反対に、僕の意識は遠くに離れていった。
………
……………
…………………
ピッ……ピッ……ピッ……
「んっ」
ぼんやりしていた視界が次第にクリアになり、周囲の状況が理解できてきた。
どうやら、救急車でどこかの病院に運ばれたらしい。右手の痛みは思ったほどではないけれど、あの燃え方をみると軽傷とは思えない。
「あっ、意識が戻りましたね。状態はどうですか?」
僕が目を覚ました事に気づいた看護師が状態を確認してきた。
「はい。痛みもそこまでではないです」
僕の左腕には点滴が繫がれていて、おそらく痛み止めも中に含まれているのだろう。
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