そうじの時間になりました。

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「今は、おそうじの時間なの!あんた達がちゃんとそうじしないと、みんながメーワクするの!ホウキでふざけるのも危ないし、やめてほしいんだけど!」 「だってつまんねーんだもん、そうじとか。なー?」 「なー!」 「やりたいやつだけやればいーじゃん。教室のそうじくらい、ちょっとサボったって先生も気づかないと思いまーす。つか、クラス全員とかいらないと思いまーす!」  ああ言えばこういう、というやつだ。  当時の俺は成績は良くないくせに、こういう悪知恵ばかりは回るという困ったガキだったのである。きっと両親や年の離れたアネキとアニキはさぞかし扱いに困っていたことだろう。 「だいたいさー。仕事ならやったらお金貰えるじゃん?俺ら、そうじがんばったって何も貰えないじゃーん?なんかホウシュウ?っていうのあれば俺らも頑張る気になるんだけどそういうの全然ないからやる気でねーっていうかー」 「報酬?」 「そうそう。例えば……」  ここでお金、だの。新しいゲームだの道具だの、みたいなことを言ったらまだ良かったのだが。  生憎、俺は頭の非常に悪いガキだった。頭の回転とかではなく、なんというか低レベルなことしか言えないようなわかりやすい男子小学生であったのだ。つまり。 「クラス委員長が、身体張ってくれるなら頑張ろうかな!そうそう、藤井サンがパンツ見せてくれるならやってもいいかもなー!」  これである。  男子小学生の中でも、本当に残念なやつらしか言わないようなことを、これまた恥ずかしげもなく堂々と言ってのけたのだ。友達も同レベルだったので、そりゃいいや、それならやるやるー!と煽ってくる始末。勿論本気で言っているわけじゃなくて、目の前のクラス委員長こと真面目腐った麻土香のことをからかってやりたかっただけである。ムカつくけれど、一番美人には違いない女の子のパンツに興味がなかったわけではないだろうが。  そりゃもうこんなこと言った暁には、クラスの女子達からは非難轟々である。最低!だの変態!だのという言葉が麻土香の友達中心に鋭い矢のごとく飛んでくるわ飛んでくるわ。俺達はその中心で、真っ赤になって震えている麻土香を見て下品に笑うという最低なことをしていたわけで。 「……に」 「あ?」 「ほ、本当に。それ、やるなら、そうじ……真面目にやってくれるの」 「!?」  だから、仰天したのはこっちなのである。てっきり泣き出すかと思った少女は、本気でその提案を受け入れようとしていたのだから。
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